(缶詰時報 2001年4 月号掲載)


私が所属しています第3研究室では多くの企業から様々な缶詰・レトルト食品の熱伝達測定を受付けております。殺菌条件は製品の数ほどあり、それに応じてレトルトの温度、圧力、熱媒体などの条件設定を変えます。

条件を入力して後はコンピュータにお任せというのならば何の問題は無いのですが、レトルトが殺菌温度に達するまでの間はかなり人の手が入ります。

カムアップ時間の調整やオーバーシュートの打ち消しなどでは「エフマル」の温度モニターを見つつ蒸気バルブの開度を頻繁に調節します。まさしく人間フィードバック回路に徹した作業となります。

また、プラスチック成型容器入りの食品はしばしばスプレー式など熱交換器を介した方法で加熱殺菌します。

この加熱法は昇温時の蒸気使用量が飽和蒸気など直接蒸気を送り込む場合と異なり、注意を要します。依頼メーカーの殺菌条件を再現させるにはそれなりの対策が必要といえます。

近年、風味や品質の低下を最小に抑えた過不足のない加熱殺菌、いわゆるミニマムプロセスが注目されています。このような製品はFo値が従来品よりも低いのではないでしょうか。

低酸性缶詰およびレトルト食品では内容物がFo=4分以上の温度履歴を受けていなければならないとされてます。この限界値付近の殺菌条件で製造する場合はより厳しい管理が必要といえます。

品質管理の分野で損失関数というのがありますが、この関数で殺菌値の管理について考えてみましょう。

Fo=4.6分の製品では0.6下がったら公衆衛生上危険ですので、これを冩=0.6分とします。

また、これによる企業の損失(製品1個に要する製造コスト)をA円とします。

さらに、この製品が出回って消費者が受ける損失をAo円としますと、この製品に許されるFoの低下凾ヘ

となります。

 

A=100円、Ao=3000円(消費者が返品に行く際の交通費、その移動で被った時間的ロスを含む)としますと、凵0.1分となります。

他方、Foが高い製品であれば、凾フ管理は甘くできることがいえます。

しかし、食品の場合はAoの値はもっと高額になるかもしれません。そうしますと凾ヘ小さくなり、厳しい管理が必要になります。

この数式で加熱殺菌の安全性を評価できるわけではありませんが、考え方はご理解いただけると思います。殺菌工程の管理は常日頃から厳正に対応されるよう希望します。
         

 

(第3研究室研究員 五味雄一郎)

 


<2001年2月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 密封容器詰食品の誘導電流等による加熱殺菌技術の開発
  2. みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化 
  3. インターネットによる情報管理

依頼試験

新規受付15件、前月より繰り越し12件、合計27件、うち完了18件、来月へ繰り越し9件

その他

  1. チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、会議開催準備)
  2. 主任技術者講習会(巻締:事務局業務、HACCP:講師担当) 
  3. 講演会聴講(日本包装学会)
  4. 第28回缶詰品評会事務局業務 
  5. 講習会講師担当(長野県缶びん詰技術研修会、北海道缶詰協会講習会)
  6. 会員工場巡回(長野県2社、福井県1社)
  7. 会議(介護食ワーキンググループ)
  8. 会員サービス(来訪対応、電話、電子メール回答など)

登録:2001/4/13

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