(缶詰時報 2001年 月号掲載) |
明けましておめでとうございます。今年は新世紀の幕開けにあたります。この記念すべき年の初めにあたり皆様のご多幸をお祈りいたします。 新世紀を迎えて、改めて感じることがあります。ご承知のように缶詰の原理は、ニコラ・アぺールによって 19世紀のほぼ幕開けと同時に生まれました。したがって、容器密封と加熱殺菌による画期的な長期貯蔵食品は、2世紀にわたって利用されてきたことになります。このような歴史ある食品の技術研究に携わっていることを、我々は大きな誇りに思います。
しかし加工食品が多様化した現在、単に長期貯蔵できるだけでは市場のニーズに十分応えることはできません。今求められているのは、フレッシュな品質を持ち、栄養的、健康的であること、しかも便利な食品です。そのためには基本的な加熱処理においても、従来の熱水や蒸気に加えて、マイクロ波や電気など新しい手段によって改良を図る事も必要です。
いっぽう、最小限の加熱と低温貯蔵、あるいは熱を加えない非熱殺菌といった、新技術が登場してきました。超高圧、光や高電圧などのパルス処理、紫外線、放射線、膜ろ過、衝撃波など多くの手段があります。少し異分野になりますが、その実用性についても注目してゆきたいと思います。
しかし高品質を求めるあまり安全性がおろそかになることは許されません。安全性に対する社会的関心が高いこと、それを保証できないと高い代償が必要になることは、前世紀(昨年夏)に大きな教訓がありました。その点、缶・びん詰、レトルト食品の安全性が高いことは自信を持って言えることですが、さらに高いゴールを目指し、微生物学的、化学的分野における安全保証のための新技術にも取り組んでまいります。また業界においてもHACCPシステムの様な安全保証システムの徹底が望まれますが、これを支援することも当研究所の業務の一つと考えています。
このような多岐にわたる業務を推進するため、そして会員の皆様との意見交換を緊密にするためにも、インターネットの利用をさらに推進してまいります。
当研究所が現在の地(横浜市金沢区)に新設移転し3年が経ちました。石の上にも3年、そして新世紀の始まり、どちらにしても気持ちを新たにする格好の時です。これからの研究の一つ一つが着実な成果に繋がるよう、今年も職員一同努力してまいります。宜しくご支援ください。(研究所長 増田寛行)
<2001年 月の主な業務>試験・研究・調査
- レトルト食品の熱伝達に及ぼす加熱媒体の種類および加圧量の影響
- 固液混合食品の熱伝達に及ぼす層状沈殿の影響
- みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化
- 混入異物の加熱履歴判定法の研究
- インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付33件、前月より繰り越し18件、合計51件、うち完了34件、来月へ繰り越し17件。
主要項目;原因究明(白濁、容器腐食など)、異物鑑定、品質成分分析、細菌接種試験、芽胞数測定、かび同定、無菌試験、変敗原因究明、証明書作成、EO開口強度試験、容器密封性試験、FDA登録関連業務、通関統計データ処理その他
- チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成)
- 主任技術者講習会(HACCP主任技術者査定会、巻締主任技術者講習会事務局業務)
- 技術大会(事務局業務、研究発表)
- 講演会聴講(食品研究所長会、日本清涼飲料研究会、HACCP講習会)
- 会員サービス(来訪対応、電話、電子メール回答など)
- 研修生指導