(缶詰時報 2001年5月号掲載) |
今年も,通勤電車の車窓から見る景色が,ほんのりピンク色に染まる季節がやってきました.「この川沿いの桜はきれだわ.ここも,あそこも.」と見ながらの通勤は,いつもより電車に乗っている時間を短く感じさせてくれます.しかし,乗換えとなると,階段をノロノロ昇り降りしていたり,大きな荷物を持って数人固まって邪魔になっていたりするフレッシュマン達にイライラさせられもします.私の中では,ピンクの桜と紺のスーツの新人さんたちは新年度の始まりを知らせてくれる風物詩です.
当研究所では,毎年新卒採用があるわけではなく,今年度の採用はありませんでしたので,通勤途中で新年度の始まりを実感した次第です.今年度の戦力増強はありませんでしたが,昨年度に購入したデジタル顕微鏡撮影装置が,幾分その肩代わりをしています.今までの撮影装置のカメラ部分が銀塩だったものがデジタルに変わっただけなのですが,画像を撮影時に確認できるのは,何より役立っています.
主に撮影するのは,芽胞形成細菌なのですが,芽胞を形成したベストショットは,数日〜数週間の培養期間のうち1日位しかありません.現像した後,上手く撮影できていない場合は培養のやり直しになっていました.また,従来であれば,フィルムを取りきった後,現像に出していた手順をふまずに必要なときに直ぐ報告書に添付でき,効率も良くなりました.デジタルの利点がそっくり役立っています.画素数は210万画素と,一般の高画素デジカメ並とまではいきませんが,報告書等に添付する画像としては十分満足しています.依頼試験のうち,顕微鏡観察では,写真が必要な場合でも観察したその日に報告書が作成できるようになりました.しかし,一般に微生物試験は,培養に数日かかりますし,菌の分離試験ではなかなか適した培地を見つからず,培地の選定に1週間以上を費やすこともあり,試験期間の短縮は難しいのが現状です.「急いでお願いします」との試験依頼では,期間短縮の鍵の大部分は対象細菌が握っているため,わずかな範囲内での対応しかできませんが,デジカメ撮影装置の導入で急げる範囲が少しだけ広がったように思っています. (第2研究室主任 大久保良子)
<2001年3月の主な業務>試験・研究・調査
- 密封容器詰食品の誘導電流等による加熱殺菌技術の開発
- みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化
- 高度精白米におけるボツリヌス菌の発育挙動に関する研究
- インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付14件、前月より繰り越し9件、合計23件、うち完了13件、来月へ繰り越し10件
その他
- チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、会議開催)
- 主任技術者講習会(殺菌:資格査定、HACCP:講師担当)
- 講習会受講(HACCP専門講師養成)
- 会員工場調査
- 会議(食品産業センター:詳細は協会日誌参照)
- 会員サービス(来訪対応、電話、電子メール回答など)
- TV取材協力
登録:2001/5/11