(缶詰時報 2001年 10月号掲載) |
少し前の話ですが、6月に中央大学理工学部で開かれた第20回シミュレーション学会に参加しました。シミュレーションは実測困難なことを計算により再現できるので、多くの分野で必須技術となりつつあります。缶詰関係でも、加熱殺菌時の温度分布とか巻締の形状変化などに使われています。 私がこの学会で一番注目していたのは、分散並列処理についてのNTT鰍フ関氏の特別講演でした。概略を紹介すると、「現在、安価なパソコンでさえ、高速の処理能力を有しているけれども、正確なシミュレーションをするには不足することがある。しかしスーパーコンピュータは超高価であり専門家でなければ使いこなせない。そのため考え出されたうまい手段が分散並列処理である。これには2種類ある。一つはパソコンで使われているようなCPU、メモリ、マザーボード、通信ボードなどの汎用部品を、通常パソコンでは1台で1個しか使わないけれども、複数つなぎ合わせ1台の装置として使うクラスタコンピュータである。CPUの数は多ければ多いほど処理能力が大きくなる。しかし、それらの連携がうまくいかないと期待するほど能力が得られないので、そのためのテクニックが必要となる。分散並列処理にはもう一つの形態があって、世界中の希望者(最低でも数千のオーダー)にインターネットを通じて計算量の莫大な仕事のごく一部を依頼して、計算結果を送り返してもらい総合するメタコンピューティングである。」
当研究室でもクラスタ型の分散並列処理の研究を開始するところなので、たいへん参考になりました。メタコンピューティングは、電波望遠鏡のデータ解析、だんぱく質分子の運動、暗号の解析などで成果を上げているのはマスコミでも取り上げられています。 私の印象としては、メタコンピューティングは、信用あるボランティアをたくさん集めるのは困難であり、自分の判断だけでは研究を進めるのができないので、熱伝達解析の研究には不向きと感じました。熱伝達解析では数千の参加者が必要なほど莫大な計算量が必要なわけではなく、研究者が計算結果をみて、その都度判断することが重要なので、クラスタ型のようなパーソナルコンピューティングが望ましいわけです。クラスタ型では費用の点でも安価に実現できます。今年度中に一号機を作成する予定です。
(第3研究室室長 戸塚英夫 tozuka@jca-can.or.jp)
<2001年8月の主な業務>試験・研究・調査
- 密封容器詰食品の誘導電流および通電加熱による加熱殺菌技術の開発
- みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化
- 高度精白米におけるボツリヌス菌の発育挙動に関する研究
- 果実缶詰の品質に及ぼす糖類などの影響について
- インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付21件、前月より繰り越し17件、合計38件、うち完了18件、来月へ繰り越し20件。
主要項目;缶詰食品の貯蔵試験、原因究明(変色、容器腐食)、異物検定、成分分析(栄養成分、色素、重金属)、変敗原因究明、細菌接種試験、細菌耐熱性試験、菌株同定、カビ同定、菌株分与、証明書作成、容器性状試験、缶密封試験、FDA登録関連業務、通関統計データ処理その他
- チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
- 主任技術者講習会(殺菌:資格査定)
- 学会発表(日本食品工学会)
- 新版製造講義原稿執筆
- 会員工場訪問
- 会員サービス(来訪見学対応、電話、電子メール回答など)