(缶詰時報 2001年 12月号掲載)


原稿執筆時点ではアフガニスタンで戦争が起きていますが、一般市民への援助物資として食糧の投下がテレビで放映されていました。この食糧について解説されていましたが、レトルト殺菌などがされているようでした。皆さんもご存知のように缶詰という発明はナポレオンの遠征のために考え出されたものです。考えてみると缶詰は戦争の歴史と共に歩んできたのかなと思えてきました。

その昔、近所に住んでいた自衛隊の方に頂いた缶詰のことを思い出します。僅かな記憶ですがラベルなどは一切なく、モスグリーンの缶に牛肉大和煮の文字だけが缶蓋に記載されていたような気がします。子供心に戦争になったらこれを食べるのかと思ったことを覚えています。今回の戦争について言及することは出来ませんが、一日も早い終結を祈っています。

国内では狂牛病の問題が発生しています。狂牛病の厄介なところは発症した牛の変性タンパク質に対し、有効な防御法がないという点にあります。熱処理や次亜塩素酸ナトリウムなどによる薬品処理によって変性タンパク質を不活性化する方法が報告されていますが、いずれの方法も食品としては不可能な条件になっています。       

狂牛病、戦争など暗いことに触れましたので、一つ明るいニュースをと思います。名古屋大学の野依教授の異性体の研究に対し、ノーベル賞が送られます。一言に異性体といっても様々なものがありますが、安易に説明すれば、新聞を鏡に写した状態と考えていただければと思います。普通であれば新聞を読むことはできますが、鏡に映る状態では文字が逆になっており、元は同じでも読みにくい別の新聞ということになります。目的とする物質を作成しようとした際に異性体(鏡に映った新聞)が作られることがあります。この異性体が悪さをすることが問題となるため、異性体を作らせず目的とした物質のみを作り出す方法が教授の研究です。ご理解いただけたでしょうか・・・。


依頼試験の報告書を書く際には戸惑いながらも、読まれる全ての方に理解していただける報告書をと考えています。前述の新聞のように例を出すわけにもいかず、もっと説明した方が良いだろうか、説明しすぎかなど、様々な心境で報告書を作成しますが、なかなか難しいものです。

 (第1研究室長 武田 淳)

<2001年10月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 密封容器詰食品の誘導電流および通電加熱による加熱殺菌技術の開発 
  2. みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化 
  3. 高度精白米におけるボツリヌス菌の発育挙動に関する研究 
  4. 果実缶詰の品質に及ぼす糖類などの影響について 
  5. インターネットによる情報管理 

依頼試験

新規受付37件、前月より繰り越し14件、合計51件、うち完了24件、来月へ繰り越し27件。
主要項目;缶詰、レトルト食品の貯蔵試験、原因究明(容器腐食、膨張、異臭)、異物検定、同加熱履歴判定、栄養成分ほか成分分析、変敗原因究明、細菌接種試験、カビ同定、菌株分与、証明書作成、容器性能試験、缶密封試験、FDA登録関連業務、通関統計データ処理

その他

  1. チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、会議開催、事務業務)
  2. 主任技術者講習会(殺菌:講師担当、品質管理:資格査定) 
  3. 講演会(日本食品微生物学会聴講、日本清涼飲料研究会聴講、無機成分分析セミナー聴講、東洋紡講演会講師担当、日本食品包装研究協会研修会講師担当) 
  4. 展示会調査(日本国際包装機械展) 
  5. レトルト食品品評会事務局業務 
  6. 会員サービス(電話、電子メール回答など)

 


登録:2001/12/17
Copyright (c) 2001, (社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会 Japan Canners Association