(缶詰時報 2002年 1月号掲載) |
明けましておめでとうございます。今年も皆様にとって良い年となるよう祈念いたします。
新世紀の幕開けとなった昨年も、輝かしい年になるよう誰しもが望んだはずですが、暗い出来事が強く印象に残る結果となりました。年末の愛子内親王ご誕生のような明るい出来事が新年には続くことを期待します。
さて、いきなり再来年を話題にすると鬼が笑うかもしれませんが、2004年は缶詰が誕生して200年目となります。この記念すべき年にふさわしい行事、計画については、今から始めても決して早すぎることはないでしょう。狂牛病騒動でもわかるように、「安全」な食品であっても「安心」な食品として理解を得るには非常に難しいことです。缶詰の2世紀にわたる長い歴史は、この安心をアピールする上で大きなポイントではないでしょうか。缶詰200年を祝うアイデアについて、皆様からもご意見をお聞かせいただきたいと思います。
缶詰の歴史を再確認するのに格好の図書が昨年出版されました。「保存食品開発物語」(原題:Pickled, Potted and Canned、スー・シェパード著、赤根葉子訳、文春文庫)です。この本はこれまで人間の歴史の中に登場してきた食品とその保存技術に注目し、文明との関わり合いを描いています。こう言うと堅苦しく聞こえますが、食品に関する説明を読んでいると、実際に作ってみたいような気にもなる楽しい内容でもあります。とくに缶詰の誕生にかかわるニコラ・アペールの苦心、そしてブリキ缶の発明者として知られるピーター・デュアランドとの関係など興味深く読むことができます。
ここで本書を紹介したかった本当の理由は、永い食品保存の歴史において、缶詰の発明がいかに画期的であったかが良く判るからです。これは缶詰の技術開発に携わる我々にとって勇気づけられるものだと思います。2世紀の歴史はともすれば、缶詰を古めかしいと捉えがちですが、それには本書の結びを引用してこう付け加えておきましょう。「食品を保存するという作業は、民族の文化、料理、記憶の一部である。豊かな時代にも決して廃れることはない。」
今年も当研究所の活動に対して宜しくご支援、ご理解をいただくようお願い申し上げます。
(研究所長 増田寛行)
<2001年11月の主な業務>試験・研究・調査
- 密封容器詰食品の誘導電流および通電加熱による加熱殺菌技術の開発
- 介護食のレオロジーに関する研究
- 熱伝達シミュレーションへの並列分散処理の応用
- 小型熱交換器による飲料の超高温殺菌に関する研究
- みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化
- 高度精白米におけるボツリヌス菌の発育挙動に関する研究
- 果実缶詰の品質に及ぼす糖類などの影響について
- インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付43件、前月より繰り越し27件、合計70件、うち完了42件、来月へ繰り越し28件。
主要項目;缶詰、レトルト食品の貯蔵試験、原因究明(変色、異臭、容器腐食)、異物検定、栄養成分ほか成分分析、変敗原因究明、細菌接種試験、カビ同定、菌株同定、細菌試験、芽胞数測定、菌株分与、証明書作成、容器密封性状試験、缶密封試験、FDA登録関連業務、通関統計データ処理その他
- チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
- 第50回技術大会(研究発表と事務局業務)
- 講演会(食品の非加熱殺菌技術シンポジウム聴講、けいはんなセミナー講師担当)
- 会議出席(協会日誌参照)
- 会員サービス(電話、電子メール回答など)