(缶詰時報 2002年 3月号掲載)

 机の中を整理していたら、古い英語の文献のコピーと一緒に、それを翻訳した大学ノートが出てきた。今から40年近く前、私が缶詰協会の研究所に入ってまもない頃、故三島専務(当時研究室主任)から読みなさいと渡された80ページを超える文献で、メタルボックス社が1961年に発行した「二重巻締の形成と評価」というマニュアルである。当時、便利な複写機というものがなかったので、文献のコピーは、1ページづつカメラで撮影し、暗室で薄い印画紙に焼き付けたものである。大変なつかしい。

 一方、大学ノートを見ると、万年筆で書いた下手くそな文字が羅列している。内容は、まるでパソコン・ソフトによる翻訳文を読んでいるようで、これが日本語かと思われる文章である。あきらかに誤訳と思われる箇所もあり、われながらまったく恥ずかしい。上司から提出を求められなかったのが幸であった。本当に誰にも見せないでよかったと思う。
 

 

 

もっとも大学を出たばかりで、二重巻締機なんていうものは初めて見るものだったし、缶詰の知識もほとんどなかったから仕方ないことだった。しかし自分から言うのも変だが、長文の英語を全訳し、図を手で書き写しているのには感心した。

 その後、私は永年にわたり、缶詰の製造技術について実務経験し、諸先輩や仲間から様々なことを指導して頂き、また多くの参考書や文献を読み、自らの研究活動、それと永い人生経験を踏んでいるうちに、世間から技術スペシャリストと思われるようになった。そして二重巻締を含めた食品製造技術の講演や原稿を数多く依頼されるようになった。

 私の現在の姿の始まりは、この古い文献と拙い翻訳だったのではないか、としみじみ思う。そして私は、もう一度この文献を翻訳し、後輩たちのために残したいと思っている。入社当時に比べ缶詰製造技術は大きく変わったが、二重巻締の原理は変わっていない。

(研究所長補佐 藤原 忠)


<2002年1月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 熱伝達シミュレーションへの並列分散処理の応用
  2. 小型熱交換器による飲料の超高温殺菌に関する研究
  3. みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化 
  4. 果実缶詰の品質に及ぼす糖類などの影響について
  5. インターネットによる情報管理

依頼試験

新規受付20件、前月より繰り越し11件、合計31件、うち完了14件、来月へ繰り越し17件。

主要項目;缶詰、レトルト食品の貯蔵試験、原因究明(異臭)、栄養成分ほか成分分析(色素、揮発性成分、有機酸、金属)、変敗原因究明、細菌接種試験、菌株同定、細菌試験、芽胞数・細菌数測定、菌株分与、証明書作成、容器密封性状試験、容器性能試験、加熱殺菌、FDA登録関連業務、通関統計データ処理

その他

  1. ルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
  2. 缶詰品評会事務局業務
  3. テレビ取材協力
  4. 主任技術者講習会(殺菌:資格査定、HACCP:資格査定) 
  5. 予算案・事業計画案作成 
  6. 会員サービス(訪問対応、電話、電子メール回答など)

登録:2002/3/18
Copyright (c) 2002, (社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会 Japan Canners Association