(缶詰時報 2002年
8月号掲載) |
今年6月の話題と言えばサッカーのワールドカップです。日本代表の予選リーグ1位通過、決勝トーナメント進出で最高視聴率も80%を超え、世間の話題は殆どワールドカップ一色になりました。各国のサポーターも日本を訪れ、非常に高い経済効果があったのではないでしょうか。さらに、国民の心に与えた影響も大きかったようです。あるアンケートの結果では日本代表の活躍に非常に元気付けられ、やる気が出たという人が80%以上いたそうです。私はこのアンケートの結果が日本経済にとっての一番の収穫だったのではと考えます。しかし、一方ではチケットに関するトラブルなどが起こり、期間中に90人以上の逮捕者が出ました。さらに世界各国ではフーリガンによる暴動も多発するなど、手放しで喜べることばかりではないのが非常に残念です。
このような損得両方の面を併せ持つことは世の中に多数存在します。缶詰など加工食品に起こる化学反応で例えるとすれば、アミノ―カルボニル反応があります。この反応はメイラード反応、非酵素的褐変とも呼ばれ、加工食品全般に起こる褐変反応です。糖などに含まれるカルボニル基とアミノ酸などのアミノ基が反応し、フルフラールやヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などのカルボニル化合物を生成し、最終的に褐色色素のメラノイジンとなります。フルフラールやHMFは食品の香りの劣化に有意な影響を与えることから、この反応は視覚だけでなく他の要因にも悪影響を与えることになります。この反応を促進する要因として鉄イオン、温度、酸素などがありますので、缶びん詰、レトルト食品を製造する際には十分に脱気を行い、鉄イオンを含まない水を使用する必要があるのです。褐変しては困る製品を製造・販売する側にとっては頭を悩ませる反応だと思います。しかし、このアミノ―カルボニル反応は必ずしも迷惑なだけの反応ではありません。日本の食文化に欠かせない調味料である味噌や醤油はこの反応によって造られており、この反応が起こらなければ味噌汁や刺身につける醤油は存在しません。
このような複雑な食品化学分野の研究を進め、より高品質な缶詰食品等の開発に結び付けたいと思っています。(第1研究室研究員 山崎良行)
<2002年6月の主な業務>試験・研究・調査
- 小型熱交換器による飲料の超高温殺菌に関する研究
- 並列コンピュータによる熱伝達シミュレーション
- みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化
- タケノコの色素に関する研究
- インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付22件、前月より繰り越し14件、合計36件、うち完了24件、来月へ繰り越し12件。
主要項目;缶詰、レトルト食品の貯蔵試験、原因究明(膨張、結晶物、異臭)、異物検定、成分分析(栄養、重金属、品質関連成分)、細菌接種試験、菌数・芽胞数測定、カビ・酵母数測定、無菌試験、菌株分与、証明書作成、缶密封性状試験、FDA登録関連業務、通関統計データ処理
その他
- チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
- 主任技術者資格認定講習会(HACCP:講師担当・試験問題作成、品質管理:試験問題作成)
- 講演会(日本食品工学会、飲料技術会議、日本シミュレーション学会)
- 展示会調査(食品工業展)
- 会員サービス(電話、電子メール回答など)