(缶詰時報 2002年
9月号掲載) |
今年ほど猛暑という言葉が相応しい年はなく、寝苦しい日々を送っています。公園では小さな子供達が噴水で水遊びしている光景をよく目にします。その噴水に近付くと塩素特有のにおいが強いことに気付きます。また、某旅館の大浴場でも目が痛いほど塩素のにおいがキツイところもありました。いままでは塩素のにおいがするなと思う程度でしたが、拙いながらも殺菌講習会の塩素殺菌に関する講師をするようになり、今までは何気ないことにも注意するようになりました。水道水も塩素を使用して消毒することは判っていましたが、なぜ塩素なのか、どの位の量を使用しているかなど詳細を知るようになりました。
混同されている方も少なくないと思いますが、塩素は化学式でClですが、塩素殺菌の塩素は次亜塩素酸HOClのことを指し、HOClには殺菌作用や漂白作用があります。次亜塩素酸の元となる塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウムは高濃度では取扱いに注意しなければなりませんが、低濃度では無害であり、野菜類の殺菌などにも使用が認められ、工場内の衛生管理にも役立っています。塩素は化学的に広く用いられ、様々な化合物中に含まれており、農薬などにも用いられています。その一方で、化学兵器として用いられるような恐ろしい成分にも含まれています。農薬には塩素の他にリンを含むものが多くなっていますが、化学兵器に使用されるような成分も同じです。これは人間にとって有益となる農薬の研究の過程で猛毒を有する成分が合成され、それが兵器に使用されるようになったことが理由だそうです。化学も両刃の剣であることを改めて認識しました。
猛暑のため飲料を購入する機会も多くなりますが、「冷却水」という思い切ったネーミングの製品に出会いました。飲んだ後にミント系の残り香により体が冷えたような感覚になり、「冷却水」という名も頷けました。しかし、この製品名を考えた人は殺菌講習会に参加していないのだろうなと思いました。殺菌講習会に参加した人、特に合格した人が「冷却水」と聞けば、不連続点処理の曲線やDPD反応の赤色を思い描き、「衛生的な飲用適の水または遊離残留塩素を1ppm以上含む水」という食品衛生法の条文を想像するはずですから。(第1研究室室長 武田 淳)
<2002年7月の主な業務>試験・研究・調査
- 小型熱交換器による飲料の超高温殺菌に関する研究
- 介護食品のレオロジーに関する研究
- 偏性嫌気性高温性細菌の芽胞形成培地の検討
- タケノコの色素に関する研究
- インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付21件、前月より繰り越し14件、合計35件、うち完了25件、来月へ繰り越し10件
主要項目;缶詰、レトルト食品の貯蔵試験、原因究明(容器腐食、結晶物、異臭)、異物検定、成分分析(栄養、重金属、油脂特数、品質)、細菌接種試験、菌数・芽胞数測定、菌株同定、変敗原因究明、無菌試験、菌株分与、証明書作成、缶密封性状試験、殺菌、FDA登録関連業務、通関統計データ処理その他
- チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
- 主任技術者資格認定講習会(HACCP:資格査定、品質管理:講師担当、殺菌:資格査定、巻締:事務局業務)
- 講演会(特許検索講習会受講)
- 展示会調査(インターフェスタ)
- 会議(中国四国缶詰技術会)
- 会員サービス(電話、電子メール回答など)