(缶詰時報 2002年10月号掲載)
菌充填法で製造された飲料及び食品の生産量が伸びております。日本缶詰びん詰レトルト食品協会が無菌充填法の研究に着手したのは1981年ですから、もう20年前のことになります。最初は高温短時間殺菌による良好な品質といった長所が注目されたと思いますが、現在では消費者にすっかり定着しました。すなわち、無菌充填法はuseful(有効な)からusual(通常の)なものになりました。技術は表舞台に出るよりも目立たなくなって本物という典型的な例だと思います。


て、日本缶詰びん詰レトルト食品協会のウエブサイトでも既報のとおり、このたびラトガース大学の名誉教授のHayakawa博士から、博士の恩師でもあったDr. C. Olin Ball氏の開発した高温短時間殺菌装置の設計図の一部が寄贈されました。この殺菌装置で食品を高温短時間殺菌したのち、18psi(0.12Mpa)まで加圧した部屋に導き、金属缶に無菌充填します。この方法をスミス−ボールの方法といい、ほとんどの無菌充填法の参考書において世界最初の無菌充填装置と紹介されているものです。その後、この装置は改良されて「フラッシュ・エイティーン」という商業機が製作され、無菌充填食品が製造されました。

  残念なことに、この装置は、高圧下で人間が作業しなければならないという欠点のため、一般化しませんでした。しかし、博士の蒔いた無菌充填法という種は、現在花が開いているわけです。


贈を受けた設計図の大半は高温短時間殺菌後に無菌的に急速冷却(フラッシュクーリング)する工程のなかで重要な作用をするバルブ、ピストンについての設計図でした。青焼きで描かれており、黄土色のラップ用紙でくるまれています。今から50年以上も前のものですから、無菌充填法の長い歴史を感じさせらます。


後に広告ですみませんが、今年の12月4日から6日まで、横浜の研究所で無菌充填技術のワークショップを開催します。募集定員は先着20名ですので、希望の方は研究所の方(担当戸塚)までお早めにお申し込みください。たぶん、この本が届く頃では、まだ定員に達していないと思います。定員に達していた場合は、もし好評であれば、来年度も引き続き開催したいと思います。

(第3研究室室長 戸塚英夫)


<2002年8月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 小型熱交換器による飲料の超高温殺菌に関する研究
  2. 高温性偏性嫌気性細菌の芽胞形成培地の検討 
  3. 高温性偏性嫌気性細菌のPCRによる同定 
  4. インターネットによる情報管理

依頼試験

新規受付19件、前月より繰り越し10件、合計29件、うち完了20件、来月へ繰り越し9件
主要項目;缶詰、レトルト食品の貯蔵試験、異物検定、成分分析(栄養、重金属)、細菌接種試験、菌株同定、殺菌条件評価、菌汚染状況調査、菌株分与、証明書作成、缶密封性状試験、容器性能試験、殺菌、FDA登録関連業務、通関統計データ処理

その他

  1. チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
  2. 主任技術者資格認定講習会(巻締:資格査定)
  3. 学会(日本食品工業学会年次大会) 
  4. 会員サービス(電話、電子メール回答など)

登録:2002/10/17
Copyright (c) 2002, (社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会 Japan Canners Association