(缶詰時報 2004年3月号掲載) |
化学の機器分析はいろいろな方面で進歩しています。
数年前まではppm(百万分の1)の検出が可能であれば十分な機能でしたが、今やppb(10億分の1)やppt(1兆分の1)などの検出が可能な分析機器も現れてきました。研究所では最新鋭とは言わないまでもこれに準じる機能を持つ機器が多いのですが、原子吸光やGC-MSなどでは微量でも精度の良い結果が得られることに関心してしまいます。予算の関係上全ての機器をICPやLC-MSなど最新鋭のものにすることは不可能ですが、古い機器も十分に活躍してくれます。古い機器は構造が比較的シンプルなためかは判りませんが、わが愛器達は故障が少ないという特徴を持っています。しかし、故障した場合にはメーカーにも部品が存在しておらず、部品がないの一言で修理を断られる恐れがあり、スイッチを入れる瞬間は“頼む!”と神に祈る心境です。現代の分析に機器は必須ですが、古くから利用されている分析方法も時には必要になります。薄層クロマトグラフィーやペーパークロマトグラフィーなどは分析機器を用いなくとも比較的簡便に精度良く成分を検出することが可能です。これらの成分を分離する分析法にはクロマトグラフィーという言葉が付いています。
液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなど分析機器の多くにもクロマトグラフィーが付きます。このクロマトグラフィーの意味は何と思いますか。語源はギリシャ語でありクロマトは“色”、グラフィーは“記録”、つまり“色の記録”という意味になります。これは1906年に単一の成分と考えられていたクロロフィルをクロロフィルaとクロロフィルbに分離したことからクロマトグラフィーと命名されたそうです。筆者が化学を学び始めた時点からクロマトグラフィーは当然、存在していましたが、何気なく使っていた用語にも深い意味があることを知りました。このクロマトグラフィーを基にして現在の分析法が発展し、様々な成分が分離されていますが、ガスなど無色のものも分析されており、クロマトグラフィー本来の意味とは異なってきています。
原稿執筆は2月初旬ですが、クレームに関するワークショップを3月に開催する案内をしました。内容は経験の浅い方向けの分析に関するものであり、もちろんクロマトグラフィーも用います。内容に関することや準備も心配ですが、参加して頂ける方がいらっしゃるかが一番の心配です。
(食品化学研究室 室長 武田 淳)
<2004年1月の主な業務>
試験・研究・調査
果実びん詰製品の食品添加物調査
加熱処理条件が玄米粥中におけるボツリヌス菌の発育に及ぼす影響
容器包材の酸素透過度がボツリヌス菌の発育に及ぼす影響
熱伝達シミュレーションへの並列分散処理の応用
インターネットによる情報管理
依頼試験
新規受付20件、前月より繰り越し5件、合計25件、うち完了14件、来月へ繰り越し11件
主要項目;異物鑑定、成分分析(揮発性成分、栄養成分、重金属)、ヘッドスペースガス分析、微生物接種試験、菌株同定、菌数測定、変敗原因究明、容器密封評価、容器性能試験、熱伝達試験、FDA工場登録関係、バイオテロ法によるFDA施設登録、通関統計データ処理、文献複写その他
チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、会議準備)
主任技術者講習会(殺菌:講師担当、HACCP:資格査定)
ワークショップ(無菌充填技術:講義と実習、クレーム原因究明:企画案内)
会議(ビジョン検討会、GMP-WG委員会)
缶詰品評会(受付、製品整理、リスト作成)
レトルト性能検査
会員サービス他(電話、電子メール回答、TV取材対応など)