(缶詰時報 2004年8月号掲載) |
先月、6月21日から25日にかけて第67回殺菌管理主任技術者資格認定講習会が当会研究所にて開催されました。5日間にわたる長丁場、受講生の皆様お疲れ様でした。私は4日目の「容器の取扱い」について講師を担当させていただいておりますが、常々説明に苦心するのが缶詰食品の容器内真空度についてです。容器内真空度は、容器の歪みや永久変形の防止ならびに食品の品質劣化を招く酸素の排除を目的にしております。容器内真空度の定義は容器内圧力と大気圧との差圧ですので、容器内圧力が大気圧に比べより低いほど容器内真空度は高いことになります。ここでいう大気圧は標準大気圧101.3kPa=1.033kgf/cm2を指します。標準大気圧は高さ76cmの水銀柱と力がつり合いますので、水銀柱表示では76cmHgといいます。現在市販されている真空度計はPa表示ですが、旧単位である水銀柱表示(cmHg)の真空度計もまだ数多く使われています。それぞれ真空度の表示の仕方が異なりますので注意が必要です。
完全な真空といいますと、完全に気体等の物質を除去し、何も存在しない空っぽの空間をいうのですが、人工的にこれを作るのは困難なようです。真空とは工業的立場では大気圧より低い圧力状態をいい、程度に応じて低真空、中真空、高真空、超高真空、極高真空と分類されています。低真空は大気圧からその1,000分の1気圧までを指し、10兆分の1気圧以下を極高真空といい、この辺りが人工的に作れる真空の限界とのことです。容器内真空度が
約−90kPaの高真空缶詰でも低真空の領域に入ることになります。ちなみに1気圧の状態の気体は体積1cm3当たり約3×1019個もの分子を含んでいますので10兆分の1気圧でも1cm3当たり約300万個もの分子が存在することになります。宇宙空間の希薄なところでは体積1cm3当たり原子1個のレベルとのことで、限りなく完全な真空に近いといえるでしょう。現行の缶詰製造に中真空、高真空あるいは超高真空の技術が直ちに応用できるか定かでありませんが、将来、缶詰食品が発展していくヒントがあるかもしれません。
(食品工学研究室 五味雄一郎)
<2004年6月の主な業務>
試験・研究・調査
アルミレスパウチのバリアー性評価
コーンスープの粘度低下に関する研究
接種試験用ボツリヌス菌の諸性状
食品の粘性が熱伝達に及ぼす影響
食品の回転殺菌における熱伝達
オンライン情報検索
インターネットによる情報管理
データベースの実用化
依頼試験
新規受付36件、前月より繰り越し22件、合計58件。うち完了33件、中止1件、来月へ繰り越し24件。
主要項目:貯蔵試験、原因究明(腐食、異臭、音響不良)、栄養成分分析、微生物接種試験、菌株同定、菌株分与、変敗原因究明、耐熱性芽胞数測定、研修、容器性能試験、試製(巻締、殺菌)、英文証明書作成、通関統計データ処理、文献複写その他
殺菌主任技術者認定講習会(講師担当)
HACCP主任技術者講習会(査定業務)
Agilentクロマト&カラム基礎セミナー聴講
国際食品工業展調査
日本シミュレーション学会聴講
厚生労働省科学研究班会議出席
予測微生物学チーム研究打ち合わせ会議出席
缶詰巻締初級試験関係業務
食品包装プロセス研究会事務業務
チルド食品研究会業務(情報誌作成、事務業務)
FDA管理サービス業務
会員サービス他(技術指導、文献調査、見学、電話、電子メール回答)