(缶詰時報 2004年9月号掲載) |
過日、映画「デイ アフター トモロウ」を見ました。温暖化により極地の氷が溶けるのに端を発し、超ド級の台風が世界を襲い氷河期がおとずれるという話でした。映画のストーリーはよくある話でしたが、圧倒的な自然の威力が迫力満点で、ラストの嵐がおさまったあとの地球の大気が澄んでいるシーンがとても印象的でした。映画のように、今年の夏は間違いなく温暖化しているよ、と思わせる気温が続いています。研究所のある横浜では連日真夏日が続き、夜になっても気温が30℃近い日もあり蒸し暑さにうんざりしています。また、各地で大雨による被害が続き、やはり気候がおかしくなっていると感じています。日本が亜熱帯になってきているのでは?という話を聞いたことがあります。亜熱帯気候というと沖縄のような気候ですね。さすがにそこまで暖かくなった気はしませんが、気温が高くなったら缶詰などの製造現場でも微生物の制御が変わると思います。微生物の増殖の速度は速くなるはずです。そこで、USDAの微生物予測プログラム(PMP、無料でダウンロードできます。
http://www.arserrc.gov/mfs/pathogen.htm)で大腸菌を例に調べてみました。大腸菌が5時間でどのくらい増殖するかというと、25℃では10倍、30℃では100倍、35℃になりますと1,000倍以上になります。今年のように暑い夏のときは、とくに原料から調理・加工、殺菌までの時間をなるべく短くするよう気をつけなければなりません。高温性の有芽胞細菌は強い耐熱性を持っており通常の加熱殺菌では殺滅できませんが、中温付近では発育しないので通常の缶詰などでは問題になりません。ところが、高温性細菌のClostridium thermosaccharolyticum は35℃で長期間培養すると発育します。最高気温が高い日が続くと心配になります。
とにかく、残暑厳しい秋でなく、すがすがしい秋が待ち遠しい限りです。秋になると研究所の大きなイベントの技術大会があります。今年は、浜松にて11月11、12日に開催します。みなさんのご参加をお待ちしています。
(食品微生物学研究室 大久保良子)
<2004年7月の主な業務>
試験・研究・調査
コーンスープの粘度低下に関する研究
接種試験用ボツリヌス菌の諸性状
好熱性嫌気性細菌の芽胞形成用培地の検討
食品の粘性と熱伝達に関する影響
食品の回転殺菌における熱伝達
オンライン情報検索
インターネットによる情報管理
データベースの実用化
依頼試験
新規受付50件、前月より繰り越し24件、合計74件。うち完了52件、来月へ繰り越し22件。
主要項目:貯蔵試験、原因究明(腐食、異物、音響不良、変色、付着物)、食塩・水分定量、揮発性成分分析、微生物接種試験、菌株同定、変敗原因究明、無菌試験、研修、容器性能試験、試製(殺菌)、英文証明書作成、文献複写、通関統計データ処理その他
横川アナリティカルシステムズ・カスタマートレーニング参加(横浜市保土ヶ谷区)
ワークショップ(クレーム原因に関する)関係業務
第34回食品研究所長会出席(東京・港区虎の門)
HACCP講師養成講習会参加
巻締主任技術者認定講習会関係業務(試験問題作成)
殺菌主任技術者認定講習会関係業務(試験問題作成)
食品包装プロセス研究会関連業務
FDA管理サービス業務
会員サービス他(技術指導、文献調査、見学、電話、電子メール回答)