(缶詰時報 2005年11月号掲載) |
食欲の秋などと申しますが、ナシ、ブドウ、クリなどにより実りの秋を実感します。寝苦しい暑さから開放され、深い眠りに就けるようになり、体力的にも回復する時期に美味しいものを頂ける、こんな素晴らしい秋をこよなく愛しています。
秋の観光に紅葉が欠かせませんが、秋になぜ、モミジやイチョウの葉は赤や黄色に色付くのでしょうか。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、葉の色が変わるのは緑色の色素成分が黄色に変化するのではありません。一般的に葉は緑色ですが、これはクロロフィルによるもので、紅葉の赤や黄色はフラボノイドやアントシアンなどの色素成分によるものです。これらの色素成分は元々葉に含まれていますが、クロロフィルの緑色によって隠されているために春から夏では緑色にしか見えません。秋になると気温とともにクロロフィルが減少するために緑色が薄くなり、フラボノイドやアントシアンによる黄色や赤色が目に映ることになります。その結果として山々が赤や黄色など素晴らしい色彩で彩られ、京都や日光いろは坂の大混雑を招くことになります。
アントシアンやフラボノイドはポリフェノールの成分であり、植物性の食品であれば必ずといってよいほど含まれています。ポリフェノールはその機能性から注目を集めていますが、時折悪さをします。有名なものとしては鉄や銅などと反応すると黒や褐色などに変色してしまいます。鉄分の多い用水などを使用した場合にみられることもありますので注意が必要です。また、確定はしていませんがポリフェノールは片頭痛を引き起こす要因として挙げられています。片頭痛は目がチカチカする、視野が狭くなるなどの前兆があり、その後に強烈な頭痛が襲ってきます。なぜ詳しいかと申しますと筆者が経験済みだからです。片頭痛は非常につらいものですから片頭痛持ちの方は美味しいワインやチョコレートはほどほどに。
研究所にはいろいろな分析依頼がありますが、フラボノイドやアントシアンなどポリフェノールに関する事例もあります。タケノコの変色などにおいても関与しているものと推定されており、変色したものが鮮やかな黄色や橙色であるならばフラボノイドなどを疑う必要があります。
(食品化学研究室室長 武田 淳)
<2005年9月の主な業務>
試験・研究・調査
容器包装詰低酸性食品のボツリヌス食中毒に対するリスク評価
耐熱性好酸性菌の芽胞形成用培地の検討と耐熱性測定
食品の回転殺菌における熱伝達
オンライン情報検索
インターネットによる情報管理
データベースの実用化
依頼試験
新規受付39件、前月より繰り越し31件、合計70件。うち完了34件、来月へ繰り越し36件。
主要項目:貯蔵試験、栄養成分分析、揮発性成分分析、異物検定、異臭・異物原因究明、結晶物同定、ヘッドスペースガス分析、脂肪酸組成分析、微生物接種試験、菌株同定、変敗原因究明、耐熱性試験、細菌検査、容器性能・密封性状試験、殺菌条件申告、英文証明書作成、通関統計データ処理、文献複写
その他
ワークショップ開催業務
主任技術者講習会業務(殺菌:講師担当)
新GMPマニュアル原稿作成
レトルト食品品評会事務局業務
FDA管理サービス関連業務
研究会業務(事務および情報誌作成)
会員サービス他(文献調査、技術指導、工場調査、見学、電話、電子メール回答)