(缶詰時報 2006年4月号掲載) |
先月2月10日から26日まで開催された第20回オリンピック冬季競技大会(開催地トリノ)においては、何と言っても女子フィギュアスケートでの日本選手陣の大健闘が強く印象に残りました。金メダリスト荒川静香選手の華麗な妙技、また果敢に4回転ジャンプに挑んだ安藤美姫選手の活躍は、まさに全世界を魅了するものがありました。
ところで、4回転ジャンプは3回転と比べてどれほど大変なのでしょうか。仮に人間の身体の回転を剛体(力を受けても全く変形しない理想的な固体)の回転運動に置き換えて考えますと、その回転の運動エネルギーは1/2I φ2 と表わすことができます(ただしI は慣性モーメント、φは回転速度)。I を一定、跳躍の高さが同じとすると、3回転に比べて4回転は回転速度を約1.3倍大きくする必要があり、エネルギーはその2乗の約1.8倍となります。これは4回転は3回転の約1.3倍の力で自分自身を回転させる必要があり、その結果、体力の消耗は約1.8倍にもなると解釈できるでしょう。一方、身体を回転させる力(速度)が3回転と同じで4回転を達成させるという条件では滞空時間を約1.3倍長くする必要があり、跳躍の高さはその2乗の約1.8倍にもなります。いずれにしても1回転の違いで要求されるレベルは格段に高くなることが想像できます。
なお、慣性モーメントI は、回転軸上を基準とし、物体の任意の位置における質量と、その任意の位置から回転軸上までの距離の2乗を掛け合わせたものを物体全域で積分したものであり、このI が小さいほど、回りやすい(速く回転できる)物体になります。同じ体重でも細長い体形の人ほどI が小さいので回転ジャンプが得意なのではと考えられます。加えて腕の長い人ほど腕の開き加減によるI の調節範囲が大きくなるので、演技の幅も拡がり、フィギュア選手に向いているのではないでしょうか。このI を別の視点で見ますと、例えば、猫を地面に対して平行に仰向けの状態で持って手を離しても手足で着地することができますが、これは手足を胴体にできる限り密着させI を極力小さくすることで、速い回転、つまり空中ですばやく体をひねることができるものと推察できます。人間だと防御本能のためか手足が胴体から出てしまい、I を小さくすることができず背中からそのまま落ちてしまいます。手足が長い人ほど不利でしょう。もし猫の身体特性に近づきたいとするなら、胴長で手足が短い人が適していると思われます。
(食品工学研究室 五味雄一郎)
<2006年2月の主な業務>
試験・研究・調査
容器包装詰低酸性食品のボツリヌス食中毒に対するリスク評価
食品の回転殺菌における熱伝達
オンライン情報検索
インターネットによる情報管理
データベースの実用化
依頼試験
新規受付27件、前月より繰り越し28件、合計55件。うち完了28件、来月へ繰り越し27件。
主要項目:貯蔵試験、栄養成分分析、膨張原因究明、定量(スズ、チアミン)、亜硫酸測定、白色物質同定、微生物接種試験、菌株同定、変敗原因究明、耐熱性測定、高温菌の測定、研修、容器性能試験、容器密封性状試験、殺菌条件申告、英文証明書作成、FDA施設登録管理、文献複写、通関統計データ処理
その他
第33回缶詰品評会開催業務
平成18年度新人研修会用テキスト作成業務
長野県技術講習会・工場巡回講師担当
研究会(チルド・食品包装プロセス、会議開催準備・情報誌原稿作成)
FDA管理サービス関連業務
会員サービス他(技術指導、文献調査、見学、電話、電子メール回答)