(缶詰時報 2007年7月号掲載) |
最近、話題となった山崎豊子の“華麗なる一族”には設定として製鉄所が用いられています。ドラマですので人間関係にハラハラするような内容でしたが、私自身は人間関係よりも、勇壮な溶鉱炉など製鉄所の映像に興味も持って観ていました。実際に製鉄所の溶鉱炉を見学させてもらったこともありますが、その時に感じたことは今でも忘れられません。
缶詰の容器に金属缶が用いられてから200年ほど経過しますが、この缶が何から出来ているか御存知でしょうか。スチール(鉄)やアルミであることは知っておられると思いますが、この仕事に就くまでは私も正確に理解していませんでした。ここで質問。「スチールの缶は鉄が使用され、アルミ缶にはアルミニウムが使用されていますが、スチール缶には鉄以外の金属も使用されています。主な2つは何でしょう?」。この質問に正解された方は製鉄関係者、容器関係者、もしくは缶詰を心より愛されている方だと思います。その答えはスズとクロム。スズはブリキ(鉄にスズメッキ)として、クロムはティンフリースチール(鉄にクロムメッキ)として缶材に使用されています。スズやクロムが使用されるには当然、理由がありますが、その理由はこのページでは書ききれませんので割愛させていただきます。
缶詰では安全な食品を常温かつ長期間の貯蔵に耐えさせるという目的がありますが、その目的には悪魔的存在であるボツリヌス菌、酸素、光線などの邪魔者がいます。しかし、ボツリヌス菌は121℃4分で加熱する、酸素は減らせば良い、光線は遮光性のある容器を用いれば良いという科学的根拠が判明しているため、商業的無菌を保持させるための殺菌条件、酸素や光線を遮断する容器などを用いて安全な缶詰が作られています。
缶詰自身は容器と内容物という非常にシンプルな構成ですが、缶詰を作るためには容器では製鉄、製缶、内容物では原料、副原料、機械類では巻締機やレトルトなど、その他も含めれば想像もつかないほどの人間が関わっています。容器、内容物、機械にはそれぞれに何らかの目的がありますが、歴史の中で改変し、その目的を達成したために現在の缶詰があります。努力を払われてこられた先人の方々に頭を垂れる次第です。
(食品化学研究室 武田 淳)
<2007年5月の主な業務>
試験・研究・調査
熱帯果実の有機酸組成および陰イオン組成の分析
有芽胞乳酸菌の芽胞形成用培地の検討
食品の通電加熱
熱水スプレーレトルトの温度分布
インターネットによる情報管理
データベースの実用化
依頼試験
新規受付33件、前月より繰り越し26件、合計59件。うち完了34件、来月へ繰り越し25件。
主要項目:貯蔵試験、分析(ヘッドスペースガス、栄養成分、硬さ)、異物検定、付着物同定、測定(油脂特数、揮発性塩基窒素、塗膜量)、繊維量定量、原因究明(穿孔、膨張、変敗)、試製、微生物接種試験、菌株同定、耐熱性試験、容器性能試験、FDA殺菌条件申告、FDA施設登録管理、英文証明書作成、ホームページ管理、通関統計データ処理
その他
基礎技術講習会開催講師担当
会員企業工場巡回調査
研究会(情報誌作成)
巻締主任技術者査定会
FDA管理サービス関連業務
会員サービス他(技術指導、文献調査、見学応対、電話、電子メール回答)