(缶詰時報 2008年10月号掲載)

"キット"といって連想するものは? 受験シーズンに縁起担ぎで登場する菓子のキットカットでしょうか。ご当地産品や季節限定品も登場する昨今ですが、九州の方言、"きっと勝つと"に語呂合わせがよいところから人気が急上昇したとか。キット《Kit》とは、国語辞典には模型などの組み立て材料一式、とあります。とはいえキットといえば、やはり検査用の簡易キットでしょうか。大相撲の大麻問題で登場した簡易キットの威力には驚嘆しました。TVで見た限りでは、簡易のpH試験紙のような、発色した色の状態からすぐに結果を確認できるような製品に見えました。

に関しても、食中毒の原因菌や病原体が短時間で正確に特定できる簡易キットが望まれます。以前、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンが問題になり、同毒素の検査をしたことがあります。その当時は、キットといってもあれこれ試薬を入れ、数時間待ち、さらに反応させ、とかなり手間と時間がかかりました。

もしや、10数年の間に相当な進歩があるのでは、とネットで調べてみてビックリです。各種癌の検査キットや生活習慣病検査キットとして糖尿病、骨粗しょう症の他にメタボリックシンドロームキット、さらに肥満遺伝子検査キットまでありました。もちろん、微生物のキットも充実していましたが、ボツリヌス毒素のキッとはありませんでした。すでに米国ではボツリヌス毒素用の診断用簡易キットがあるようです。

ツリヌス毒素といえば、昨年、米国で商業的に生産されたホットドッグ・チリソース缶詰でボツリヌス食中毒が発生したとのことです。肉を含まない製品で、米国産の缶詰でのボツリヌス食中毒は33年ぶりとのこと。米国で発生する缶詰による同食中毒はそのほとんどが家庭で製造されたもので年間30件程度とのことです。この食中毒で検査用の簡易キットが採用されたかは不明ですが、日本でのボツリヌス毒素の診断用簡易キットの商品化が望まれます。

 

(食品微生物学研究室 大久保良子)


<2008年8月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 麻竹析出物に関する研究

  2. 交流高電界処理による耐熱性細菌芽胞の挙動(会員企業との共同研究) 

  3. 変敗品から分離したC.thermosaccharolyticum の遺伝解析による同定および芽胞の耐熱性測定

  4. 連続式通電加熱の電流供給方法の違いが熱伝達に及ぼす影響

  5. インターネットによる情報管理

  6. データベースの実用化

依頼試験

 新規受付25件、前月より繰り越し20件、合計45件。うち完了25件、来月へ繰り越し20件。

主要項目:貯蔵試験、分析(ヘッドスペースガス、栄養成分)、測定(油脂特数、揮発性塩基窒素、スズメッキ量)、定量(ヒスタミン、スズ)、異物検定、原因究明(変敗、変色)、品質評価、微生物接種試験、耐熱性測定、細菌試験、菌株同定、菌株分与、容器試験(性能、性状観察、密封)、かたさ測定、英文証明書作成、FDA施設登録、ホームページ管理、通関統計データ処理

その他

  1. 日本食品工学会聴講

  2. アグリフードEXPO調査

  3. ビスフェノールA溶出実態調査

  4. 講習会(巻締・査定業務、殺菌・二次試験関連業務)

  5. 本会技術賞選考委員会出席

  6. 日本食品微生物学会理事会出席

  7. 研究会(情報原稿作成)

  8. FDA管理サービス関連業務

  9. 会員サービス他(技術相談、文献調査、見学応対、電話、電子メール回答)


Update 2008/10/10

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