(缶詰時報 2009年4月号掲載) |
入学試験にはもう縁のない私ではあるが、時々新聞に載る入試の問題を読むことがある。とはいっても、たいていは暇つぶし程度であったが、今回の大学入試センター試験の問題は少し関心を持って読んだ。缶詰に関係した問題が出題されていたからである。こう書くと何の科目かと思われるかもしれないが、国語に栗原彬氏の「かんけりの政治学」の文章が出題された。
缶蹴りといっても最近では知らない人も(特に今年の受験生のような平成生まれでは)多くなったと思うので、入試問題の解説文を引用すると、「缶蹴りとは隠れん坊の一種でオニが陣地に缶を一個立て、缶を守りながら相手をつかまえる遊び。オニにつかまらないように缶を蹴ると、つかまった仲間を逃がすことができる」とある。また、缶蹴りにはローカルルールのようなバリエーションがあって、複数オニというルールでは見つかったものも捕虜でなくオニになって、複数のオニが残りの隠れているものを探すという。
私も小学生のころ幼なじみ達と缶蹴りで遊んだという記憶はある。オーソドックスなバリエーションのないルールだったと思うが、たしか会場は近所の小さなりんご畑だったと思う。リンゴの木と小屋しかなかったので隠れん坊には不向きであったが、適当な高低差があり、日本人の好きな?奇襲攻撃が可能だった。さらに蹴られた缶は、スキーのジャンプのごとく遠くまで飛んでいった。しかし、私自身が缶を蹴ったという記憶はない。さすがにこの業界に関与することになる人は子供のころから、缶を蹴るなんて野蛮なことなんてしないというわけではない。また国語の出題では、缶を蹴って友を助ける行為は仲間との連帯感に基づくものというのが正解になっているが、けっして連帯感がなかったわけでもない。おそらくすぐに捕虜になってしまったかオニになることが多かったからという気がする。
名前も思い出せない幼なじみを思って、「かんけりの政治学」が収録されている「政治のフォークロア−多声体的除法」という本をAmazonですぐに買ってしまった。たぶん、受験生や入試関係者とタッチの差だったと思う。蛇足ですが、「かん」を栗原氏はひらがなで標記し入試の問題文では漢字で標記しています。私は漢字の缶が少し堅いような気がして好きです。
(食品工学研究室 戸塚英夫)
<2009年2月の主な業務>
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Update 2009/4/8 |
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