(缶詰時報 2009年5月号掲載) |
三月は初旬から暖かい日が続き、桜の開花も早いだろうと思っていましたが、月末には一転して肌寒い日が続き開花も足踏み状態となりました。研究所の緑地帯にも山桜の木が一本あります。毎年ほんのわずかしか花は咲かないため見逃してしまいがちでしたが、今年は昨年よりは多くの花を咲かせました。桜の花びらの色は白やピンクや薄緑など種類によって様々です。よくみられるソメイヨシノは薄いピンク色でまさに桜色ですが、この色素は何だろうとふと思って調べてみました。代表的な花の色素はアントシアニンやフラボンやフラボノールやカルコンなどの総称のフラボノイド、カロチンとキサントフィルの総称のカロチノイド、ベタシアニンとベタキサンチンの総称のベタレイン、クロロフィルなどがあり、これらの割合によって表現される花びらの色調が異なっています。桜の花びらの色素はアントシアニンで、具体的にはシアニジン-3-グルコシドが主な色素だそうです。サクランボの赤色や黒豆の色素も同じで、色素の量の多少により色調が異なるのだそうです。
当研究室では色素に関する依頼試験や研究は行いますが、食品添加物の着色料としての定性試験を行うことはほとんどありません。最近、会員の方から天然色素の定性試験について質問がありましたので、それらを調べてみることにしました。調べたのはクチナシ色素についてです。水溶性のカロチノイドで黄色、赤色、青色があり、黄色はクロシン、クロセチンが主な成分であり、赤色と青色はクチナシ果実の抽出液に酵素を作用させて得られるものです。青色は黄色と組み合わせて緑色としても使用されています。公定法や文献に従って行った定性試験の結果は、食品から色素の抽出はできたのですが、薄層クロマトグラフィーによる分離がうまくいきませんでした。その原因は見当がつきますので、再チャレンジしてみようと考えている次第です。
(食品化学研究室 田口真寿美)
<2009年3月の主な業務>
|
Update 2009/5/11 |
|
Copyright (c) 2009, 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 / Japan Canners Association, All rights reserved |