(缶詰時報 2009年7月号掲載)

年の4月のことですが、アカデミックな講演会を2件聴講する機会に恵まれました。ひとつはIFTジャパンセクション主催 前IFT会長 現米国ペンシルバニア州立大学教授 Dr. Floros氏の特別講演会(於:東京農業大学)、もうひとつは日本食品工学会インダストリー委員会主催 食品新技術研究会第7回例会(於:東京海洋大学)というものでした。

Floros氏の講演会では先生らの研究成果ならびに米国における最新包装技術の紹介で、その中でもMAP包装(いわゆるガス置換包装)とナノ粒子による微生物検出技術は特に印象に残りました。MAP包装は、炭酸ガス、酸素、窒素等の混合ガスを特別の割合に調整し、包装容器内の空気と置換して内容食品の鮮度保持と静菌効果の延長を図る技術です。食品の種類によって品質保持に最適なガスの混合比率は異なり、精密な調整が必要のようですが、MAP包装を成功に導いているのもプラスチック包材のガスバリアー性向上によるところが大きいでしょう。また、ナノ粒子による微生物検出法はナノレベルの磁気粒子を微生物表面に付着させ、特定の微生物を検知する技術で、迅速な微生物検査が可能ということです。ナノテクノロジーの食品分野への応用は今後、益々発展していくものと実感しました。

う一方の講演会は、コンピュータシミュレーションの食品製造プロセスへの応用として、商用CFD(数値流体力学)ソフトウェアの食品分野への適用がテーマとなりました。東京海洋大学S教授が講演されたCFDによる鍋内対流のシミュレーションでは、IH加熱とガス加熱での鍋内の液体流動のパターンの違いを3次元グラフィックのアニメーションで非常にリアルに再現できることを示しておりました。このように商用CFDソフトウェアは計算結果を3次元グラフィックで表示するなどビジュアル性に優れており、複雑な問題対象物にもフレキシブルに対応できます。また、通常のパソコンにもインストールすることができ、今日のパソコンの処理能力は飛躍的に向上していることから実用上遜色ない速さで結果を表示してくれます。商用CFDソフトウェアの価格は100万円台以上するため大学や企業研究機関がユーザー対象となっていますが、最近ではオープンソース版も登場するようになり、個人の研究用に気軽に入手が可能となりつつあります。

上、アカデミックな講演会の概要報告でした。

 

 (食品工学研究室 五味雄一郎)


<2009年5月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. トランス脂肪酸に関する研究

  2. 果実・野菜類の品質成分に関する調査

  3. 変敗品から分離した C. thermosaccharolyticum の耐熱性

  4. カムアップタイムの温度分布が殺菌値に及ぼす影響

  5. インターネットによる情報管理

  6. データベースの実用化

依頼試験

 新規受付27件、前月より繰り越し12件、合計39件。うち完了26件、来月へ繰り越し13件

主要項目:貯蔵試験、ヒスタミン定量、分析(栄養成分、ヘッドスペースガス)、測定(油脂特数、揮発性塩基窒素、耐熱性芽胞数)、異物検定、原因究明(同定、変色、膨張、変敗、容器損傷)、耐熱性試験、菌株分与、無菌試験、容器性状試験、容器性能試験、加熱殺菌、英文証明書作成、ホームページ管理、通関統計データ処理

その他

  1. サイエンスフォーラム社主催「次世代レトルト食品研究会」講演

  2. 新人食品製造実習(会員企業)

  3. 水産利用懇話会出席

  4. 神奈川県県央福祉会内覧会出席

  5. FSIS輸入規制関連情報調査

  6. 研究会(チルド食品・情報原稿作成)

  7. FDA管理サービス関連業務

  8. 雑誌PDFファイル化作業

  9. 会員サービス他(技術相談、文献調査、見学応対、電話、電子メール回答)


Update 2009/7/13

    >> 日本缶詰びん詰レトルト食品協会ホーム

  

Copyright (c) 2009, 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 / Japan Canners Association, All rights reserved