(缶詰時報 2009年10月号掲載) |
世の中では、総選挙が終わり、新しい政党による日本の舵取りが始まりました。政権交代、世代交代が叫ばれる中、国民の生活はどのように変わっていくのでしょうか?
世代といえば、微生物の世界にも世代時間というものがあります。全く違う種類に交代するわけではなく、一般的に細菌では1つの細胞が2つに分裂する時間の事を言います。細菌の種類、栄養状態、温度や水分活性などの環境条件によりその時間は変わりますが、食中毒菌について例を挙げると、最も条件が良い状況で、世代時間が短いものは、腸炎ビブリオであると言われています。その世代時間は、およそ10分で、食中毒に至る発症菌量は約106以上ですから、約3〜4時間で、食中毒レベルに達してしまいます。また、その他、病原大腸菌では約30分、ボツリヌス菌では約12〜24時間と言われています。
人に危害を及ぼす菌も食品中では、単独ではなく、様々な種類の微生物と存在しており、その中でも特に割合が多く、環境条件に適したものが増殖します。古くから有害微生物の増殖を抑制する方法として、乳酸菌が用いられていますが、ボツリヌス菌を代表とする危害対象となる微生物の世代時間が約12時間以上に対して乳酸菌の増殖が約20分程度と早く、有害微生物が増殖することができないために安全性が確保できるわけです。
微生物が競合した場合には、より数が多く、優勢で、環境に適応した、早い者勝ち的な現象が起こります。食品の安全性の確保には、人に対して有害な微生物は減少させ、有益な微生物に貢献してもらっておりますが、私たち国民の生活に関しても、私たちが選んだ大多数、優勢な勢力が、安全で安心できる良い社会になるよう貢献してくれる事を望みます。
(食品微生物学研究室 山口敏季)
<2009年8月の主な業務>
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Update 2009/10/9 |
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