(缶詰時報 2010年8月号掲載) |
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6月には初のアフリカ大陸開催となったサッカーワールドカップが行われ、日本代表の活躍に日本中が盛り上がりました。試合は日本時間で深夜が多かったため、睡眠時間を削って応援していた方も多いのではないでしょうか。日本の最終戦となったパラグアイ戦では、深夜にも関わらず視聴率は57%と関心の高さが数字でも表れていました。この日は私も次の日の仕事のことを考えながらも途中で寝ることが出来ず、最後までテレビに釘付けでした。試合に敗れはしたものの眠気が覚めるほど感動したことを覚えています。
ワールドカップの行われた南部ではないですが、西アフリカ原産の果実でミラクルフルーツをご存知でしょうか。ミラクルフルーツは赤いドングリのような形をした果実で、この果実自体に甘味はなく美味しいわけではありませんが、この後に食べる酸味のある食品を甘く感じさせる作用があります。これはミラクルフルーツに含まれるミラクリンという糖タンパク質によるものです。このミラクリンが舌に付着した状態で酸味成分を摂取するとミラクリンと酸味成分が結合して甘味神経を刺激するため、甘味を感じるとのことです。
ですから酸味成分が化学変化によって甘味成分に変化しているわけではありません。このような味を変化させる成分は味覚修飾物質と呼ばれ、ミラクリンの他にもクルクリンやギムネマ酸などがあります。クルクリンは摂取後に水や酸味が甘く感じられ、ギムネマ酸はショ糖の甘味が感じられなくなる効果があるということです。私は数年前にミラクルフルーツの効果については1度だけ体験しまして、確かにレモンがオレンジのように甘く感じられました。この時はレモンしか試しませんでしたが、今度機会があれば、様々な食品で試してみたいと考えています。レモンの酸味は主にクエン酸ですが、酢酸、乳酸、リンゴ酸など酸の種類によっても効果に違いがみられるのか非常に興味があります。ミラクルフルーツの栽培は難しいらしく店頭で生の果実を見かけることはありませんが、最近では凍結乾燥品などもあり、比較的入手し易くなっているようです。ミラクリンの効果には個人差があるということですが、興味のある方は酸味が甘味に変化する不思議な感覚を試してみてはいかがでしょうか。
(食品化学研究室 山崎良行)
<2010年6月の主な業務>
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Update 2010/8/6 |
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