(缶詰時報 2010年9月号掲載) |
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今年の夏の話しになりますが、冷夏と予想されていたのにもかかわらず、2005年以来の夏日連続記録が更新され、人、動物、植物には厳しい環境でした。
真夏日の気温35℃以上という温度は、人にとっては過ごしにくく、ぐったりして、活動が低下してしまいますが、微生物の世界では異なります。地上に棲む細菌においては人にとっては高温多湿で不快な環境が快適な条件と言えるからです。
その微生物のなかでも細菌の環境温度で分類すると35℃付近で活発に動いたり、増えたりする細菌を中温細菌と呼んでいます。中温細菌としては、大部分の一般細菌や、代表的な食中毒菌、酵母、糸状菌(カビ)などが含まれています。人と違って、条件が良ければこれらの微生物はきっと、この30〜35℃の気温において、活発に仲間を増やし、快適に過ごしていたことでしょう。
食品と微生物に関連する温度について、生鮮食品、要冷蔵および冷凍食品をこのような温度帯に長時間放置することは、品質が低下するだけでなく、すぐに微生物的な腐敗という現象が起こります。当研究室が主に研究業務で取り扱っている容器詰加圧加熱食品(レトルト食品)では、常温流通時に腐敗細菌の増殖が起こらないように殺菌されています。商業的無菌性が保持されているため、それらの食品を涼しいところで保管・流通していれば、腐敗することは事実上ありません。しかし、真夏日のような気温が長期間続き、直射日光が当った場合や、倉庫内が異常高温の状態にある場合などの常温(25℃前後)とは呼べないような環境で食品が保持された場合には、膨張、破裂などを伴った事故が起こる可能性があります。それらの変敗原因菌たちは35℃付近では発育できず、55〜65℃で活発に活動します。南国育ちのような、たいへん暑いところが大好きな微生物たちです。暑がりの私とは一緒に暮らせないけれど、これからも何かと関係は続きそうです。
(食品微生物学研究室 山口敏季)
<2010年7月の主な業務>
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Update 2010/9/7 |
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