(缶詰時報 2011年6月号掲載) |
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5月に入って早々、そろそろ食中毒の時期になるなと思っていた矢先に食中毒事故が起こってしまいました。亡くなられた方、重症の方も多く大事故となり、連日ニュース報道されています。私は、微生物学研究室に席をおきますが、日ごろ加熱処理で死滅してしまう細菌にはうとく、情けないのですが、今回の食中毒では驚くことが2点ありました。まず、1つめは、大腸菌の型がO111という聞きなれないものであったことです。O157は有名ですが、ベロ毒素を出す大腸菌は他にもあるくらいの認識でした。少し調べてみると、検出率がO157に次いで多いのがO026、O111と報告されていて、O抗原をもつ大腸菌のうち、強毒素の腸管性大腸菌は16種類もありました。毒性はというと、腸管性出血大腸菌は、人に感染する量が1g(約50〜100個)と少量であるため、人から人への二次感染も起こしやすいとされています。今回の事故では、亡くなられた方、重症の方が多いことから、O111はとくに毒性が強いのかと思いましたが、毒性はO157もO111も毒性に大差はないとのことです。毒性の強い菌株に汚染されてしまったのかと納得しました。
2つ目は、今回の食中毒は牛の生肉が原因とされていますが、「日本では生肉として最終消費することを前提にした牛肉の流通はない」ということで、とても驚いてしまいました。料理を提供する側の責任で加熱用の肉をトリミングして提供していて、厚生労働省もそれを認めていたことです。ですが、ふと考えますと、この業界でも、食中毒対策の必要な細菌としてボツリヌス菌があげられ、加圧加熱殺菌食品には食品衛生法で殺菌条件等の決まりがありますが、それ以外の加熱食品に関してはとくに決まりがないのが現状です。厚生労働省も平成15年から数回通達で、加圧加熱殺菌食品以外の食品に対してもボツリヌス食中毒対策をとるよう指示をだしています。法的な規制はありませんが、平成22年の各業界団体宛に出された通達では、当該品へのボツリヌス食中毒対策の状況を報告するようにとのことでした。すでに対策をとっていることと思いますが、この機会にもう一度、自社製品のボツリヌス菌対策は十分か確認してみてはいかがでしょうか。
(食品微生物学研究室 大久保良子)
<2011年4月の主な業務>
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Update 2011/6/3 |
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