(缶詰時報 2011年8月号掲載)


々暑さが増し、いよいよ夏本番となりました。個人でも会社でも節電、省エネ、暑さ対策に梅雨入り前から奔走されているのではないでしょうか。今年の梅雨明けは?と思っていたら、関東地方では早々に梅雨明けとなりました。

象庁によると今年の梅雨明けは平年より10〜15日早く、1951年の観測開始以降、関東甲信は7番目の早さとのことです。この夏は昨年の猛暑よりはやや低めの気温となる予想ですが。どうなることでしょう。

雨といえば、梅雨時期における部屋干しの生乾き臭の原因菌がモラクセラ(Moraxella)菌であると特定されたとの報道がありました。某企業と愛知学院大学の河村好章教授による研究成果で今後の洗浄・除菌技術の開発が大いに期待されています。このモラクセラ菌は、生活圏のどこにでもいる菌なのですが、生乾き臭(雑巾臭)を発生するものはモラクセラ オスロエンシスという菌種であると同定されました。その方法は実際に雑巾臭が発生する衣類から、寒天培地により菌を分離して、生化学的な性状によりグループ分け、更に高頻度に分離された菌株について、古タオルに接種試験され再現試験をされたそうです。

特定した菌株の同定には当研究室でも導入している16S rRNA遺伝子における系統解析と一連の各種分子生物学的手法が用いられました。寒天培地を用いた培養法による生化学的試験と細菌遺伝子による分子生物学的手法の新旧2つの技術をみごとにバランス良く活用した研究成果であると深い関心を覚えました。

在の微生物試験においては迅速かつ簡便な方法が望まれており、公定法である培養法に変わる方法が研究開発されています。その点では検出・同定の試験方法が分子生物学的な手法を用いた技術にシフトしていると言えます。遺伝子をターゲットとした技術では、生きていて培養できる微生物のみならず、死んだ微生物や培養できない微生物なども検出されます。

状、微生物的危害を想定した食品検査では、生きた菌を対象とするべきであり、最新の分子生物学的な手法だけに頼ることは危険な結果解釈や情報の混乱を招くものと考えられますので、生物性状を十分理解し、把握することが重要です。

(食品微生物学研究室 山口敏季)


<2011年6月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. トランス脂肪酸に関する研究

  2. 水産缶詰由来の嫌気性有芽胞細菌の性状および芽胞形成用培地の検討

  3. 市販加工食品のpH、Awおよび生菌数測定

  4. 介護食品の力学特性シミュレーション

  5. 国際食品工業展調査

依頼試験

 新規受付29件、前月より繰越し10件、合計39件。うち完了24件、来月へ繰越し15件。

主要項目:試験(貯蔵、細菌、容器溶出、容器性能、缶密封性状)、異物検定、開缶調査、同定(付着物、菌株)、原因究明(腐食、異臭、変敗)、測定(水分活性、生菌数、熱伝達)、容器性状観察、菌株分与、試製、殺菌処理、研修、ホームページ管理、通関統計データ処理

FDA登録支援事業

 新規受付2件、前月より繰越し8件、合計10件。うち完了6件、来月へ繰越し4件。

主要項目:英文証明書作成、施設登録。

その他

  1. レトルト操作法研修

  2. 長野県産業人材カレッジ講師担当

  3. 第88回殺菌講習会開催および講師担当

  4. (株)パーキンエルマーFTIRセミナー参加

  5. 「食品企業のカビ被害とその対策シンポジウム」聴講

  6. 長野県缶詰協会主催基礎技術講習会講師担当

  7. 食品微生物技術懇話会講演聴講

  8. 缶詰食品翻訳作業

  9. チルド食品研究会関連業務

  10. FDA管理サービス関連業務

  11. テレビ撮影協力

  12. 会員サービス他(技術相談、文献調査、見学応対、電話、電子メール回答)


Update 2011/8/5

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