(缶詰時報 2011年9月号掲載) |
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「詳しくはWebで」がすっかりお馴染みになった昨今、学術論文の参照文献としてURLが記載されることも多くなりました。時には、暗号のような長い英数記号を入力し、いざアクセスを試みれば思いもよらないエラーページなどが表示され、コンピュータの前で首をかしげるという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。書物とは異なり改変が容易なインターネットの世界で、情報公開時と全く変わることなく利用可能な状態はどの程度維持されているのでしょうか。
日本における図書館情報学関係学術誌に掲載されたインターネット参照文献の入手可能性について2010年に行われた調査結果が公表されています(藤田節子 "失われていくインターネット上の参照文献 図書館情報学分野の雑誌論文に参照されたインターネット文献の入手可能性の分析調査". 情報管理. Vol.53, No.9(2010), 492-503.)。本調査によれば、調査時から遡って約3年前の2007年に刊行された学術誌に掲載されたインターネット参照文献では28%、約5年前の2005年に刊行されたものでは41%が記述されたURLでは見つからなかったという結果になっています。ただし、URLのみで見つからなかった参照文献について、さらにタイトルや著者名などをキーワードにサイト内検索や検索エンジンを利用して調査を行うことによって2007年では89%、2005年では82%が入手可能になったと報告されています。こうした結果から、インターネット情報を参照文献として記載する際には、タイトルや著者名など必要十分な書誌事項を記すことがURLを記述することよりも重要であると著者は述べています。
インターネット情報を参照文献として記載するにあたっては、科学技術情報流通技術基準(SIST(シスト):Standards for Information of Science and Technology)が指針の一つとなります。「SIST 02 参照文献の書き方 5.10 ウェブサイト,ウェブページ,ブログ」では次のような記述方法が示されています。「著者名. "ウェブページの題名". ウェブサイトの名称. 更新日付.(言語の表示),(媒体表示),入手先,(入手日付). ブログの場合はブログ名と更新日付をいれることが好ましい」。その他SISTでは、雑誌や図書などについて、電子文献を参照文献として記載する際の方法についても示されています。
当会で購読している食品関係国内学会誌について、最近の投稿規定の引用文献の書き方に関する項目を調べましたところ、インターネット情報について特に言及していないもの、インターネットホームページを文献として引用しないこと(ただし、脚注や本文中へのカッコ書きなどの記載は妨げない)、引用文献とは別に引用URLの項目を設けて記載するよう規定しているものなどが見受けられました。
近年、学会誌をはじめとする多くの学術情報がインターネット上で閲覧可能になってきています。情報資源の永続的な利用にあたり、インターネット上のドキュメントに恒久的に与えられるデジタルオブジェクト識別子DOI(Digital Object Identifier)などを用いたURLに左右されることのない万国共通の保存や公開方式の統一化が進むものと思われます。今後ますますインターネット情報の活用が増えることが予想される中、過去、現在、未来をつなぐ情報管理のあり方についても試行錯誤の日々が続きます。
(食品工学研究室 加藤睦美)
<2011年7月の主な業務>
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Update 2011/9/5 |
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