(缶詰時報'96年8月号掲載)

 どうも昨年あたりから、専門家と称される人たちが世間を騒がせている。残念なことに、技術系の専門家が我々の信頼を裏切っている気がする。現代のように高度な技術社会では、しろうとではお手上げなことが多いので、結局頼りになるのは専門家なはずである。一般の人たちは専門家に適切な対策や助言を期待しているのである。

 FDAの低酸性缶詰規則では、加熱殺菌条件や重要管理因子に関することは、「殺菌の専門家(process authority)」が責任を持って決めると定めている。
殺菌の専門家とは、加熱殺菌について熟練した知識を持ち、適切な施設を持つ個人または組織のことである。
規則では、殺菌の専門家の要件について具体的に定めていないけれども、微生物学、化学、数学、工学、金属学、物理学、機械学、情報科学...など多くの科学知識が要求される。その他にも、法律や政策の知識や、現場での実務経験も必要になる。
また、意志決定の根拠となった実験データを効率よく記録、保管するために文書管理能力も要求される。
これらを全てマスターしなければ、加工業者に適切な助言をしたり、対策を講ずることはできない。しかし、一個人では、これら全てをマスターするのは困難なので、実際には組織が担当しているようである。

 もちろん、これらの知識も大切であるけれども、殺菌の専門家に一番大切なことは、自分が公衆衛生を守っているという使命感だと思う。また、わからないことはわからないと認め、心の中でオロオロしながらも、自分が対処しなければならないという覚悟も必要でしょう。

 良い専門家とは、そんなふうに私はなりたいと思っている人たちではないでしょうか。

(食品工学研究室 戸塚英夫)

<’96年6月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 水産缶詰の香気成分に関する研究
  2. 昆虫の加熱履歴の判定方法の検討
  3. E型ボツリヌス菌芽胞の食品中での耐熱性試験
  4. 成形容器強度試験
  5. オンライン情報検索
  6. インターネットによる食品情報検索
  7. データベースの実用化
  8. 国際食品規格会議調査報告書作成

依頼試験

 新規受付19件、前月より繰り越し7件、合計26件 うち完了18件、継続8件
 主要項目:工場調査、品質評価、栄養成分分析、変敗原因の究明、耐熱性試験、接種試験、菌株分与、熱伝達測定、英文証明書作成、FDA殺菌条件申告、通関統計データの処理、資料送付

その他

  1. 「缶詰・飲料・レトルト食品製造講義」出版企画
  2. 研究会(無菌包装食品、チルド食品、加工包装機械)関連業務
  3. 研究会情報作成
  4. FDAプロセスファイリング関連業務
  5. 会員への技術サービス
  6. その他

登録:1996/7/11
(c)1996, JCARL INFORMATION SERVICE