缶詰・びん詰・レトルト食品について

缶詰、びん詰、レトルト食品は賞味期限を過ぎたらどうなる?

缶詰の賞味期間はどのくらいあるでしょうか?①半年?、②1年?、③3年?

  • 皆さんご存じのとおり「③」が正解です。缶詰の賞味期間は製造されてから3年間を設定しているものがほとんどです。これは加工食品の中では極めて長期間であり、同等かそれ以上のものをあげても他には「パスタ」や「サバイバルフード」のような乾燥食品が思い出されるくらいでしょうか。

    ここでは「賞味期間」を質問しましたが、缶詰、びん詰、レトルト食品をはじめとする加工食品に表示されているのは「賞味期限」の年月(日)となっています。では、「賞味期限」の日付を過ぎた缶詰は一体どうなってしまうのでしょうか。腐って食べられなくなってしまう?

  • 1824年 パリーが北極探検に携行した缶詰

缶詰、びん詰、レトルト食品は、その定義から「容器に密封して加熱殺菌」という製造過程を必ず通ります。このことを考えると、缶詰、びん詰、レトルト食品は食品を腐敗させる菌が中にいませんので「未開封であれば半永久的に喫食可能」と言うことができます。しかも、保存料や殺菌料は使っていません。ただし、開封してしまうと生鮮食品と一緒ですので、当然ながら保存は効きませんのでご注意ください。
そこであらためて「賞味期限」という言葉の意味を考えてみましょう。

辞書を引くと、「賞味」とは「食物をほめ味わうこと」といったことが書かれています。つまり「賞味」とは「おいしい」という意味です。

では、びん詰やレトルト食品はどうなのでしょうか。

缶詰もびん詰もレトルト食品も、「食品を容器に密封して加熱殺菌」を行うことは「缶詰、びん詰、レトルト食品の作り方」のページで説明いたしましたね。であるなら、びん詰もレトルト食品も缶詰と同じように3年の賞味期間があるの?と思いますね。

これについては、実は、びん詰やレトルト食品は、缶詰と全く同じというわけではないということを申し上げます。それぞれの賞味期間は、びん詰では約半年~1年程度、レトルト食品では1~2年程度を設定したものが多いです。この違いは容器の違いによるところが大きいのです。

缶詰(金属缶)と比較すると、透明のびん詰では「中身が見える」ため中の食品によっては光の影響を受けて変色することがあります。これは、そのびん詰を保存する環境にもよるのですが、変色も加味した期間が「賞味期限」として表示されることとなります。「おいしさ」というのは決して「味」だけではないということですね。見た目もその要素なのです。したがって、びん詰は缶詰よりも賞味期間は短く設定されることとなります。

レトルト食品では、カレーでよく見るように、アルミ箔をラミネートした不透明パウチ採用したものが多いですが、これは缶詰と同様に光の影響を受けることがないため、缶詰と同じくらいの賞味期間を設定することができそうです。しかし、レトルト食品の賞味期間は実際のところ缶詰より短めとなります。これは、レトルト食品はその多くがカレーなどにみるように、多種類の原材料や調味料、香辛料を使った混合調理品であるため、保存中にその製品に期待される味わいが微妙に変化してくるものもでてきます。したがって、その食味の変化を加味しますので、一般的にはレトルト食品の賞味期限は缶詰と全く同じとはならないのです。

また、アルミ箔をラミネートしていない透明フィルム容器のレトルト食品では、びん詰と同様に中身がどんな様子か見えます。ですので、商品を選ぶときにはわかりやすく便利ですが、この反面、透明のフィルムの容器は光の他にも空気の影響を受ける場合があります(プラスチックフィルムは一般的にごく微量ですが空気を通す性質があります)。したがって、これらの要素は賞味期間の設定に影響してきます。

とはいえ、透明プラスチック容器は中身が見える点や電子レンジ対応が可能な点など、大変便利に使えますので、現在ではアルミ箔以外の素材を使って光や空気の影響を受けにくくした包材が多く開発され製品化されています。

いずれにしても、色や味などの品質の変化は、びん詰、レトルト食品とも賞味期限の日付以降となります。しかも、缶詰と同様に腐ることはありません。

レトルト食品の容器の話になりましたので、いろいろな種類をここで紹介しておきましょう。

レトルト食品の容器には、アルミ箔等の金属箔入りのタイプと透明タイプの二種類があります。使用するプラスチックの種類、アルミ箔の有無によって、容器としての性能が異なるため、製品の保存性、殺菌条件、輸送や保管条件などを考慮して選択する必要があります。

アルミ箔入りタイプ
  • プラスチックフィルムとアルミ箔等の金属箔を貼り合わせたもので、光線や空気中の酸素の透過を遮断し、缶詰と同様に、食品を長期間保存することができます。JASで規定されているレトルトパウチ食品の容器として、現在もっとも多く使われています。

    袋の素材は、食品に接する内層がポリエチレンまたはポリプロピレン、中層がアルミ箔、外層はポリエステルが、それぞれ使われています。さらに中層にポリアミド(ナイロン)を貼り合わせたものものあります。

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透明タイプ
  • アルミなどの金属箔を使用せずにプラスチックフィルムだけを貼り合わせたものなので、通常は光線や酸素を透過しやすくなっています。このために、比較的短期間の保存性しか得られないものがあります。ただ、内容食品が見えるので、商品によっては販売上の利点となっています。袋の素材は、内層がポリエチレンまたはポリプロピレン、外層はポリアミドが一般的ですが、さらに外層にポリエステルを貼り合わせたものもあります。

    なお近年では光線の遮断性に優れ、酸素透過性が非常に低いプラスチックフィルムが開発されており、透明容器の包材に使用されるようになっています。このような透明容器詰食品の保存性は、金属箔を使った容器に詰められた食品とあまり変わりがありません。

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トレー状の容器
  • レトルト食品の容器には、一般に使われている袋状のもののほかに、トレー状の成形容器があります。金属箔入りトレー状容器の場合は、袋と違って外層は厚手の金属箔を使い、内層は主としてポリプロピレンが使われています。透明トレーの場合は、厚手のポリプロピレンまたはポリカーボネートが使われています。
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缶詰、びん詰、レトルト食品は賞味期限を過ぎたらもう食べられない?

賞味期限を過ぎた缶詰、びん詰、レトルト食品を「大丈夫!」と食べたことがあるという方は少なからずいらっしゃると思います。では、なぜ賞味期限が切れたものでも食べることができる(食べて大丈夫)と判断できるのでしょうか。

加工食品の賞味期限を決める際には、様々な検査を行います。その中に官能検査(食べて味を確認する検査)という検査があります。これは、長期間保存して、その食品の味が変わる(おいしくなくなる)時点を見つけるための検査ですが、この検査で確認された「味が変わる時点」が「賞味期限」と考えられそうですが、実はそうではありません。その時点よりも期間を前倒しにしたところが「賞味期限」として設定されるのです。その前倒し分の比率を「安全率」と言います。したがって、「賞味期限」はその味が変わる時点から安全率をかけて設定されます。すなわち、実際に味が変わってしまう時点よりも前の時点を「賞味期限」としているのです。これは、缶詰、びん詰、レトルト食品に限らずいずれの加工食品でもこの考え方を採用しています。ですので、感覚だけではなく、科学的にも「賞味期限を少々過ぎても味や品質が大きく変わってしまうものではない」ということなのです。

ただし、それまで保存されてきた環境が、その食品にとって適切でない場合はこの限りではありません。例えば、缶詰といえど、高温多湿な場所で長期間おいておくと品質の劣化はやはり早まりますので、表示されている賞味期限以内の日付であっても、期待される美味しさでなくなっていることがあります。食品を保存する場合は、その食品に表示された保存方法に従ってください。

賞味期限の定義は、食品表示法という法律で定められていますが、「定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする」と記載されています。この「定められた方法」というのが、その食品に表示されている保存方法です。

加工食品の期限表示にはもう一つ「消費期限」というものがあります。これは、「賞味期限」よりも強い表現となります。この「消費期限」が表示されている食品の場合は、「記載されているその期限までに消費してください」ということですので、この「消費期限」には従うようにしてください。この「消費期限」は、お弁当やお惣菜、生菓子などそもそも日持ちのしない加工食品に表示されます。

どちらか迷うことがあったら、その加工食品の表示をご確認ください。