缶詰、びん詰、レトルト食品の作り方
-
本会の名称は、「日本缶詰びん詰レトルト食品協会」です。なぜ、缶詰とびん詰、レトルト食品が一緒になっているのでしょう?
まずは、定義を見てみましょう。
-
食品を缶又はびんに詰めて密封したのち、加熱によって食品の腐敗の元となる微生物を殺菌(加熱殺菌)し、常温下での長期保存性を与えた食品。
-
合成樹脂(プラスチック)フィルムやこれとアルミはくなどをはり合わせた光を通さない材質のパウチ(袋)または成形容器を用い、内容物を詰めて完全に密封(ヒートシール)し、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)を行い、常温下での長期保存性を与えた袋詰または成形容器詰食品。
これらは、品質表示基準(JAS法)、食品衛生法などの食品関連の法律によって決められているものです。
缶詰とびん詰は一つの定義に含まれていますが、レトルト食品は別に定義されています。
しかし、よく見るとこれらの定義には共通点があることが分かります。
キーワードは「密封」と「加熱殺菌」です。レトルト食品は「加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)」としていますが、缶詰やびん詰も同様に「加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)」を施すものがあります。ちなみに、「レトルト殺菌」とは100℃を超える高い温度で殺菌することです。圧力をかけて高温を得ます(圧力鍋とおなじです)。
このように、缶詰、びん詰、レトルト食品は容器こそちがいますが、共通した方法を用いて製造されています。
それは、容器に「密封」してから「加熱殺菌」を施すことで、食品を腐敗させたり食中毒のもととなる微生物を殺菌しているのです。この方法により、密封状態が壊れない限り、缶詰やびん詰、レトルト食品は腐ることがありません。 しかも、これにより常温で流通保存ができるという大きな特徴が付与されます。
このように、缶詰やびん詰、レトルト食品は常温で長期間保存できることから、保存料や殺菌料などの添加物を使っていると思われがちですが、缶詰、びん詰、レトルト食品(「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」法律上の名称)には保存料、殺菌料を使ってはならないことが、食品衛生法で定められています。上記の通り加熱殺菌を施すことで中身は無菌状態となりますので、そもそも保存料や殺菌料を使う必要がないことがお分かりいただけるでしょう。これも大きな特徴です。
したがって、缶詰、びん詰、レトルト食品は安全で衛生的な食品であります。
定義が分かったところで、次に作り方をみてみましょう。
缶詰やびん詰、レトルト食品は、一般につぎのような工程によって作られます。
原料→洗浄→調理→詰込・注液→脱気→密封→殺菌・冷却→検査・荷造り→製品
-
缶詰、びん詰、レトルト食品を作る上で一番大切なことは、原料の品質の選択ということです。もっとも新鮮な原料をもっとも短い時間に製品にすることが、その原料のもっている独特の風味を生かすための必要条件であります。
例えば、水産缶詰の工場は、魚が多く水揚される漁港の近くに、果物や野菜缶詰の工場は、原料の栽培されている産地に多く建てられています。
果物缶詰の場合は、適度に熟した香りや味のものを使う必要があるので収穫後ある程度追熟して加工するものもあります。
また、最近の冷凍技術の進歩に伴い、原料には魚、食肉など急速冷凍したものが多く使われるようになりました。
したがって、缶詰、びん詰、レトルト食品に使用される原料は、小売店で売られている生の魚や果物、野菜より新鮮で栄養価が高く、一番おいしい味のものが使われているといえます。
-
生の原料に付着している土壌、農薬その他の異物を洗い落すために、きれいに洗浄します。
食べられない部分、魚では頭・内臓、果物や野菜では、皮・種子・芯などを取り除きます。これらの作業はほとんど機械化され、スピーディに処理されますので、原料の風味はよく保たれます。
-
調理された原料は、規格で決められた内容量の基準にしたがって、1つ1つ厳密に計量して、缶やパウチに詰められ、調味液などを注入します。なお詰込と注液は、自動的に流れ作業で行われます。
-
-
中身を詰めた缶やパウチは、密封する前に、中の空気を取り除きます。それは、①加熱殺菌中に容器内の空気の膨張により缶が変形したりパウチが破裂するのを防ぐ、②缶詰貯蔵中の缶内面の腐食を防ぐ、③内容物の色、香り、味、ビタミンその他の栄養素の変化を防ぐなどの目的で行われるものです。
-
-
密封工程は、空気、水、細菌などが缶やパウチ内へ侵入するのを完全に防ぎ、製品が貯蔵中に変質したり、腐敗したりしないようにするために重要な工程です。 缶詰の場合は、缶のふたを図のような二重巻締という方法で完全に密封します。缶詰の密封は、巻締機によって自動的に行われ、能率は製品の種類によりますが、1分間に60~2,000缶の巻締が可能で、缶の中の空気をぬいて真空状態で巻締ができる真空巻締機がおもに使われています。
-
レトルト食品の場合は、食品を軟包装袋に充填する際には、フィルムを熱で溶かして密封するため、特殊な充填・シール機械が使われます。ミートソースのような流動状の食品、あるいはカレーやシチューに代表される固形物を含む流動状の食品は、計量・充填およびヒートシールを一台で行う機械が使われ、ハンバーグのように固形物主体で真空シールを行う食品については、充填とシールに別々の機械が使われています。袋のシールはプラスチックを熱で溶かして圧着させる方法によるもので、内容物を充填する際、シール部分に商品や蒸気を付着させない機構になっているのが特徴です。
また、レトルト食品は、軟包装袋(Flexible Pouch)または半剛体の成形容器(Semi-rigid Container)を使用しています。したがって、レトルト食品の製造の全工程でピンホールや破裂の原因となる強い衝撃を与えないように取扱いに注意する必要があります。
-
密封した缶詰、びん詰、レトルト食品は、殺菌機によって加熱殺菌(レトルト殺菌)されます。これは細菌など微生物を加熱によって死滅させて腐敗を防ぎ、長く貯蔵できるようにするためで、中身の種類によって加熱温度と時間を変えて行います。たとえば、果物、果汁、ジャムなどの缶・びん詰は、酸が多いので、100℃以下の温度でしかも短い時間で殺菌できます。そのために、デリケートな味や香りもよく残りますし、ビタミンも保存できるわけです。野菜や魚、肉、レトルト食品などの場合は100℃以上の温度で時間をかけて殺菌することが必要です(加圧加熱殺菌=レトルト殺菌)。殺菌が終わると、品質の変化を防ぐため、ただちに水で冷却します。
また、野菜の大型缶や、カレーなどの調理食では温度を高くし短時間で殺菌する回転殺菌法が用いられます。この方法によると殺菌時間が短くなるのでフレッシュな香味がよく保たれます。
レトルト食品の加熱殺菌には加圧殺菌・加圧冷却機構が組み込まれた高圧殺菌釜(レトルト)が使われます。通常115~120℃で殺菌を行いますが、厚みが少ないので熱伝達がきわめてよく、135℃、2~5分間で殺菌するような高温短時間殺菌(HTST)による“ハイ・レトルト殺菌法”と呼ばれる方法も採用されています。
-
-
出来上がった缶詰は、真空度の低いもの、詰め過ぎや軽量のもの、凹んだものなどの不良缶を選びだして取り除きます。この検査は昔は打検棒で軽くたたいてその時の音で判断していましたが、現在では自動機械で検査します。
レトルト食品については、X線や金属探知機などを通過させて検査します。検査がすんだものは、ダンボール箱に詰めて倉庫へ搬入します。このように、缶詰、びん詰、レトルト食品は、容器の違いによる特性はありますが、基本的にはほとんど同じ工程で製造されます。
-