令和5年度 逸見賞授賞報文
1. 選考期日
2023(令和5年)年9月5日(火)
2. 授賞報文
♢ 逸見賞(2本)
○ Inhibition of Morganella morganii growth and histamine production using a
bacteriophage cocktail
北海道大学大学院水産科学研究院 山木将悟・山﨑浩司・川合祐史
北海道大学大学院水産科学院 坂之上葵・新井康介
Food Science and Technology Research Vol.28,No.6 (2022)
選考理由; 缶詰原料であるマグロ、カツオ、サバ、イワシなどの魚介類は、ヒスチジンを多く含み、ヒスタミン産生菌であるMorganella morganiiの汚染はヒスタミン食中毒を引き起こす原因となる。
本研究は、M.morganiiに感染するバクテリオファージを用いてヒスタミン産生の抑制を検討したものである。ファージは単体で使用するよりも混合物を使用する方がM.morganiiのヒスタミン産生が抑制され、複数のファージを混合することでファージ耐性菌の出現を抑制したことを示唆している。ヒスタミン食中毒リスク低減に対して大きく貢献する内容であり、水産加工品の安全性向上が期待されるため高く評価した。
○ トマト製品における Thermoanaerobacterium属の増殖リスク評価
カゴメ株式会社 藤池春奈・小林昌生
日本食品工学会誌Vol.23,No.2 (2022)
選考理由; Thermoanaerobacterium属はトマトジュースの膨脹変敗の原因菌種として特定されており、pH4.4以上で増殖リスクがあることがわかっているが、トマトジュース以外のトマト加工品についての事例がない。
本研究は、pH4.4以上のトマトジュース以外のトマト加工品におけるThermoanaerobacterium属の増殖リスクを評価するため、屈折計示度(RI)の異なるトマト製品を用いて増殖評価を行ったものである。増殖抑制因子としてRI、pH、クエン酸を検証し、トマト製品中で増殖しないRIとpHの範囲、また一定量以上のクエン酸含有で増殖リスクが低いことを明らかにしている。トマト加工品の微生物学的リスク低減に対して大きく貢献するものであり、またトマト製品以外での増殖制御につながる点などを高く評価した。
3. 選考委員名簿(敬称略)
委員長 | 久田 孝 東京海洋大学 学術研究院教授 |
委員 | 竹永 章生 日本大学 教授 |
〃 | 石原 賢司 (国研)水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 付加価値向上グループ長 |
〃 | 佐藤 一弘 東洋製罐グループホールディングス㈱ 綜合研究所 所長 |
〃 | 長嶋 玲 大和製罐㈱ 総合研究所 所長 |
〃 | 田中 光幸 田中技術士事務所 所長 |
〃 | 石川 敦祥 日本缶詰びん詰レトルト食品協会技術委員会 委員長 |
4. 表彰式
2023(令和5年)年11月8日(水)
第72回技術大会開会式席上
[ ホテルメトロポリタンエドモント(東京都千代田区飯田橋3-10-8) ]