令和8年度 逸見賞授賞報文

1. 選考期日

2026(令和8年)年9月3日(木)

2. 授賞報文

♢ 逸見賞(2本)

○ A Real-time PCR-based Method for Estimating the Thermal History of Cockroach in Processed Foods, Resistant to Enzymatic DNA Degradation

㈱ハウス食品分析テクノサービス 門田陽子、向後智子
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 真野潤一
食品衛生学雑誌 Vol.67,No.1 (2026)

選考理由;加工食品への昆虫混入においては、混入した昆虫の加熱履歴を推定することが、製造工程での混入か、製造後の混入かを判断する上で重要である。一方、昆虫の死後は酵素によるDNA分解が進行するため、従来のゲノムDNAを用いた方法では、加熱によるDNA断片化と死後の酵素分解による断片化を区別することが困難であった。本研究は、この課題に対して、死後の酵素分解を受けにくいミトコンドリアDNAを標的としたリアルタイムPCR法を開発し、レトルトカレー中に浸漬したクロゴキブリを用いて、加熱によるDNA断片化を評価したものである。また、実際の異物検査では利用できる昆虫の体部位が限られることを考慮し、昆虫体を9部位に分けて検討した結果、いずれの部位においてもミトコンドリアDNAはゲノムDNAに比べて酵素分解を受けにくいことを明らかにした。本法を用いてDNA解析を行うことにより、DNA断片化と加熱損傷との関係性を高く評価できる可能性が示され、レトルト食品等に混入した昆虫の加熱履歴を推定する手法として実用性が高い。異物混入時の原因究明やクレーム対応にも活用が期待されることから、食品の品質管理に有用な研究として高く評価した。

○ Effects of retort sterilization and oxygen on the coloration of beef meatballs during storage:Oxidation-reduction reaction underlying meat color pinking

(公財)東洋食品研究所 稲田有美子
名古屋大学 シンクロトロン光研究センター 田渕雅夫
あいち産業科学技術総合センター 三河繊維技術センター 野本豊和
麻布大学 獣医学部 水野谷航・坂田亮一・竹田志郎
Food Science and Technology Research Vol.31,No.6 (2025)

選考理由;レトルト食品においては、安全性の確保に加えて、保存中の品質を安定して維持することが重要であり、特に食肉製品では保存中の色調変化が商品価値や消費者の評価に影響する。本研究は、レトルト殺菌した牛肉ミートボールについて、保存中に生じる中心部のピンク色への変化、いわゆるピンキング現象に着目し、その発生に及ぼす酸素の影響とメカニズムを検討したものである。容器内の酸素濃度を変えてレトルト殺菌した牛肉ミートボールを保存し、肉色の変化を調べるとともに、酸化還元電位、酸素消費、チオール基、カルボニル化合物、鉄の価数などを測定した。その結果、酸素濃度21%の条件では、保存後にミートボール中心部が顕著にピンク色となり、酸化・還元状態の変化が肉色の変化に関与していることが示唆された。レトルト殺菌後の食肉製品に生じる色調変化について、単なる外観の観察にとどまらず、各種機器分析により酸化還元反応との関係からそのメカニズムを検討した点が評価できる。レトルト食品の品質保持や製品設計に有用な知見を提供するとともに、消費者からの「生煮えではないか」といった問い合わせやクレームへの科学的な説明にもつながることが期待されることから、高く評価した。

3. 選考委員名簿(敬称略)

委員長   久田 孝  東京海洋大学 学術研究院教授
委員   竹永 章生 日本大学生物資源科学部食品生命学科特任教授
〃  石原 賢司 (国研)水産研究・教育機構 水産技術研究所 
       環境・応用部門 水産物応用開発部 主幹研究員
〃  佐藤 一弘 東洋製罐グループホールディングス㈱ 常務執行役員 新規事業推進室長
〃  長嶋 玲  大和製罐㈱ 先端技術研究 所長
〃  田中 光幸 田中技術士事務所 所長
〃  石川 敦祥 日本缶詰びん詰レトルト食品協会技術委員会 委員長

4. 表彰式

2026(令和8年)年11月26日(木)

第75回技術大会開会式席上
[江陽グランドホテル(宮城県仙台市青葉区本町2-3-1)]

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