ご挨拶

  

 
   
  

日本缶詰協会会長 後藤 康雄

  
本日は缶詰誕生200周年記念記者発表会を開催しましたところ、大勢のマスコミ関係の皆様のご出席をいただきまして、ありがとうございます。
本年は、フランスでニコラ・アペールという人が缶詰の製造原理を発明しました1804年から数えて、ちょうど200年目にあたります。缶詰は知らない人がいないくらいになじみの深い食品ですが、その起源については、ご存じの方はむしろ少ないのではないでしょうか。

200年前と言えば、フランスではナポレオンI世が活躍した時代です。本日ご出席の皆様の中には、缶詰ってそんなに早くからあったの、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。缶詰の製造原理は、食品を容器に詰めて外部から何物も侵入できないように密封し、その後、加熱によって密封容器内の細菌を殺菌するというものです。「密封」と「加熱殺菌」が缶詰製造法の要諦をなしておりますが、200年も前にアペールがこの原理を発明していたということは驚くべきことではないでしょうか。

なお、アペールが実際に200年前に製造したのは瓶詰でありまして、缶詰ではありませんが、その製造は、容器が異なるだけで、原理は缶詰と変わることがありません。アペールは、多くの瓶詰食品を実際に製造し、その製法を著書「あらゆる食品を数年間保存する技術」に記していますが、このたび日本缶詰協会の会員企業の協力を得まして、この中から

ポトフ ジュリエンヌ
(野菜スープ)
コンソメスープ 白いんげん豆 イチゴピューレ

の5品目を選んで復元製造しました。

これら5品目の食品につきましては、後ほど皆様にご試食いただきますが、200年前のレシピとは思えないほどすばらしい食品ばかりです。「ヨーロッパ通信」は、1809年2月10日付の記事でアペールの技法を次のように紹介、絶賛しています。引用してみますと、「アペール氏は、春、夏、秋を瓶の中で生き生きとさせる、つまり季節を容器に封じ込める技法を発明した。彼の技法を使えば、季節条件に影響されることなく、繊細な園芸作物をガラス瓶の中に畑にあるような状態で保存できる」というものです。この賛辞は、現代にも通じる缶詰、瓶詰、レトルト食品などの製品特性を的確に表現しています。

アペールの技法、缶詰の製造法として最も重要な過程になっている「密封」と「加熱殺菌」は、後にルイ・パスツールらによって理論づけられて、缶詰や瓶詰ばかりでなく、その後に登場した様々な加工食品の製造法に応用されています。缶詰で確立された製法は、あらゆる加工食品の母なる技術と言えます。今日、便利で重宝な多くの加工食品が出回っておりますが、缶詰が200年前に発明されていなかったら、これら加工食品の市場登場はかなり遅くなったのかもしれません。その意味でも、私ども缶詰の製造や販売に携わっているものとして「加工食品の母なる技術」の創造者であるアペールとその製品について紹介できることを誇りに思っております。

本日ご紹介する復元5品目は、容器に缶と瓶、レトルトパウチを使用しましたが、これとは別に、200年前にアペールが利用した容器と同じような瓶を使い、密封も当時と同様の方法で行った復元品も展示してありますので後ほどご覧いただきたいと存じます。

今日の発表会を機会に、缶詰に新たな目を注いでいただけることを願っております。

Copyright (c) 2004, (社)日本缶詰協会/Japan Canners Association