「万病の薬」、「永遠の青春のりんご」。
日本に江戸時代に入ってきた「林檎」は、味がまずく、あまり利用されませんでした。現在のりんごは、明治初年、アメリカから導入されたもので、デリシャス、紅玉、スターキングなどはすべてアメリカ産です。
りんごほど数々の伝説、民話、神話などに顔を出し、諺lこも使われている果物は他にはないでしょう。アダムとイブが食べた禁断の果実はりんごですし、アラビア民話には「万病の薬」として登場し、アラビアンナイト物語にもそのくだりがあります。北欧神話にも、神々が「永遠の青春のりんご」を食べて、不老長寿を保った、という逸話があります。イギリスには、An apple a day keeps the doctor
away.(一日一個のりんごは医者を遠さげる)という諺があります。
りんごは生で食べたり、すりおろしたり、ジュースにしたりの他、ジャム、砂糖煮、焼りんご、アップルパイなどとして広く用いられています。
りんごには多くのビタミン類(A・B群・C)、同化されやすい糖類、酵素、有機酸(リンゴ酸、クエン酸、酒石酸)、ミネラル(リン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄)が豊富に含まれています。リンゴ酸は体内の炎症を癒し、体内を浄化します。よって、りんごは発熱疾患に対して解熱作用、気管支炎や風邪に際しては、去痰作用、消炎作用を発揮します。
多くの医師を育成したイタリアのサレルノの医学学校のテキストには「梨を食べれば小便、りんごを食べれば大便」という一文が出てきます。りんごに含まれるペクチン(食物繊維)とカリウムが、腸を刺激してお通じをよくしてくれることを物語っています。 動脈硬化を予防、りんご村にいない高血圧患者。
このカリウムは、高血圧の一因である塩分(ナトリウム)を排泄し、ペクチンは血液中のコレステロールの増加を抑えてくれるので、動脈硬化の予防に役立ちます。高血圧と脳卒中が多いことで有名な東北地方でも、りんごを毎日5個以上食べるりんご村の人には、ほとんど高血圧患者がいないことが疫学的に証明されています。
アメリカのバーモント地方は、長寿者が多いことで有名ですが、この地方の、健康長寿に役立っているのが、りんご酢にハチミツを加えた飲み物(りんご酢2さじとハチミツ2さじをコップ1杯の水に溶いて朝晩飲む)であることは昔からよく知られています。このハチミツ入りりんご酢は、疲労回復、食欲増進、高血圧、食中毒の予防、二日酔などにも大変効果的です。りんごには鎮静作用もあるので、空腹感があり、よく寝つけないときなど、就寝前にりんご1個を食べるとよいでしよう。(石原結實) |